運用型データ分析単体では実現不可能 データ分析講座(その104)

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◆ 問題解決型データ分析と運用型データ分析

 データ分析・活用では大きく2つの型があるのではないかと思います。「問題解決型データ分析」と「運用型データ分析」です。このどちらを実施しているのかを把握しておくことは重要です。今回は「問題解決型データ分析と運用型データ分析」というお話しです。

1. データ分析とは

 そもそもデータ分析とは何でしょうか?

 人によって定義やイメージが異なるかもしれませんが、ただデータを分析しただけでは何も得られません。何らかの目的をもって分析をします。

 「うちは、目的無き分析をしてしまっている」という企業様でさえ、よくよく聞いてみると目的があったりします。明確であるとか、具体的であるなど、そういうことを脇に置けば何かしら目的があります。

 例えば「新たな知見を発掘する」「売上を上げる」「生産性を上げる」「コストを下げる」「残業時間を減らす」「歩留まりを改善する」「サイクルタイムを短縮する」「品質アップ」「何かしらデータを活用する」などが浮かんできます。

 何はともあれ目的に沿った形のアウトプットが求められます。

 つまりデータを分析した後に、目的に適ったアウトプットに向けた「知恵の統合」が必要になります。知恵の統合とは、データを分析することで得られた個々の知見だけではなく、データ以外の情報なども融合することです。データ分析とは、目的を達成するためにデータを分析し知恵を統合することです。

2. 問題解決型データ分析

 「問題解決型データ分析」とは、従来の問題解決アプローチの中で積極的にデータを絡めていくというものです。そうすることで、できるだけ数字で問題解決を進めていくことになります。

 例えば、感覚や直観的なモノをできるだけ数字に置き換えることで、より客観性を増すことになります。しかし現実はそう簡単でもありません。世の中のすべてがデータ化されているわけではないからです。

 現実は、主観×客観の融合になります。データ分析の結果をありのままに見る観察力と、データ以外の部分を分析結果に組み込む洞察力が必要になってきます。

 つまり「人」が重要なファクターとなります。人次第といっても過言ではありません。少なくとも現在のAIには無理でしょう。なぜならデータ化されていない世界を組み込むことができませんし、仮にデータ化されていても全く場違いな情報を組み合わせることがAIでは難しいからです。

3. 運用型データ分析

 「運用型データ分析」では、日々の業務活動の中にルーティンに近い形で、データを活用し業務をより良いものにします。

 人の手がある程度離れたデータ分析・活用(自動化・機械化・AI化・テンプレート化など)で、インターネット広告や人事関連業務などで使われているAd-TechやHR-Techなどがこれにあたり、略称で「〇〇Tech」といわれています。

 例えば、定期的に同じ質問項目で市場調査をしていたとします。毎回、同じオペレーションで調査設計から回答者のリクルーティング、実査、アンケート回収、集計、レポーティングと進んでいれば、かなりの部分が自動化されます。またインターネット広告などで、いくつかのクリエイティブを準備し、クリックされる割合の良いものを自動的に露出を高めることもできます。

 運用型データ分析は、インターネットの世界を中心に進んでいる印象がありますが、実際はそうでもありません。

 例えばFA(ファクトリーオートメーション)という言葉が示す通り生産現場では、昔から当たり前のように実現していました。FAとは簡単にいうと人的作業をロボットなどを活用して無人化することです。大量のデータが発生し、そのデータをもとに制御を行います。生産現場のようなブルーカラーの業務では、生産性を向上をさせるために積極的にデータ分析・活用がさなれており運用型データ分析の典型といえます。

 従来から問題になっているのは、ホワイトカラーの業務のためのデータ分析・活用です。ホワイトカラーというキーワードで考えた時、インターネットの世界を中心に進んでいる印象があります。営業活用のためのCRM/SFA(顧客関係管理システムなど)などホワイトカラーのための運用型データ分析が整備されてきました。

4. 運用型データ分析の前と後に、問題解決型データ分析がある

 「問題解決型データ分析」と「運用型データ分析」は、まったく別物で独立しているのかというとそうでもありません。この2つは密接に絡まり合っています。端的にいうと「問題...

データ分析

◆ 問題解決型データ分析と運用型データ分析

 データ分析・活用では大きく2つの型があるのではないかと思います。「問題解決型データ分析」と「運用型データ分析」です。このどちらを実施しているのかを把握しておくことは重要です。今回は「問題解決型データ分析と運用型データ分析」というお話しです。

1. データ分析とは

 そもそもデータ分析とは何でしょうか?

 人によって定義やイメージが異なるかもしれませんが、ただデータを分析しただけでは何も得られません。何らかの目的をもって分析をします。

 「うちは、目的無き分析をしてしまっている」という企業様でさえ、よくよく聞いてみると目的があったりします。明確であるとか、具体的であるなど、そういうことを脇に置けば何かしら目的があります。

 例えば「新たな知見を発掘する」「売上を上げる」「生産性を上げる」「コストを下げる」「残業時間を減らす」「歩留まりを改善する」「サイクルタイムを短縮する」「品質アップ」「何かしらデータを活用する」などが浮かんできます。

 何はともあれ目的に沿った形のアウトプットが求められます。

 つまりデータを分析した後に、目的に適ったアウトプットに向けた「知恵の統合」が必要になります。知恵の統合とは、データを分析することで得られた個々の知見だけではなく、データ以外の情報なども融合することです。データ分析とは、目的を達成するためにデータを分析し知恵を統合することです。

2. 問題解決型データ分析

 「問題解決型データ分析」とは、従来の問題解決アプローチの中で積極的にデータを絡めていくというものです。そうすることで、できるだけ数字で問題解決を進めていくことになります。

 例えば、感覚や直観的なモノをできるだけ数字に置き換えることで、より客観性を増すことになります。しかし現実はそう簡単でもありません。世の中のすべてがデータ化されているわけではないからです。

 現実は、主観×客観の融合になります。データ分析の結果をありのままに見る観察力と、データ以外の部分を分析結果に組み込む洞察力が必要になってきます。

 つまり「人」が重要なファクターとなります。人次第といっても過言ではありません。少なくとも現在のAIには無理でしょう。なぜならデータ化されていない世界を組み込むことができませんし、仮にデータ化されていても全く場違いな情報を組み合わせることがAIでは難しいからです。

3. 運用型データ分析

 「運用型データ分析」では、日々の業務活動の中にルーティンに近い形で、データを活用し業務をより良いものにします。

 人の手がある程度離れたデータ分析・活用(自動化・機械化・AI化・テンプレート化など)で、インターネット広告や人事関連業務などで使われているAd-TechやHR-Techなどがこれにあたり、略称で「〇〇Tech」といわれています。

 例えば、定期的に同じ質問項目で市場調査をしていたとします。毎回、同じオペレーションで調査設計から回答者のリクルーティング、実査、アンケート回収、集計、レポーティングと進んでいれば、かなりの部分が自動化されます。またインターネット広告などで、いくつかのクリエイティブを準備し、クリックされる割合の良いものを自動的に露出を高めることもできます。

 運用型データ分析は、インターネットの世界を中心に進んでいる印象がありますが、実際はそうでもありません。

 例えばFA(ファクトリーオートメーション)という言葉が示す通り生産現場では、昔から当たり前のように実現していました。FAとは簡単にいうと人的作業をロボットなどを活用して無人化することです。大量のデータが発生し、そのデータをもとに制御を行います。生産現場のようなブルーカラーの業務では、生産性を向上をさせるために積極的にデータ分析・活用がさなれており運用型データ分析の典型といえます。

 従来から問題になっているのは、ホワイトカラーの業務のためのデータ分析・活用です。ホワイトカラーというキーワードで考えた時、インターネットの世界を中心に進んでいる印象があります。営業活用のためのCRM/SFA(顧客関係管理システムなど)などホワイトカラーのための運用型データ分析が整備されてきました。

4. 運用型データ分析の前と後に、問題解決型データ分析がある

 「問題解決型データ分析」と「運用型データ分析」は、まったく別物で独立しているのかというとそうでもありません。この2つは密接に絡まり合っています。端的にいうと「問題解決型データ分析」は単体で実現可能です。一方「運用型データ分析」は単体では実現可能ではありません。

 「問題解決型データ分析」は「運用型データ分析」を必要としませんが「運用型データ分析」は「問題解決型データ分析」を必要とします。

 「問題解決型データ分析」は問題を発見したあと課題を定義、次いで考えた対策案を実行し、その実行結果を評価すれば終了します。この際「実行」の段階でデータ分析・活用をするのなら、それは「運用型データ分析」になります。

 「運用型データ分析」は、日々の業務の中でデータを活用しより良くしなければなりません。日々の業務のどこで、どのようなデータを集め加工し、どのようなアルゴリズムを走らせるのかを「運用型データ分析」を実施する前に考えなければなりません。それを考えるのが「問題解決型データ分析」なのです。

 そして「運用型データ分析」の良し悪しを定期的に評価し、次に向けたより良い「運用型データ分析」に進化させる必要性も出てきます。その評価分析をするのは「問題解決型データ分析」です。

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この記事の著者

高橋 威知郎

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)

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