データ分析は脇役、課題解決の道具 データ分析講座(その81)

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◆ データ分析は脇役、課題解決の道具

 「社内に溜まっているデータを使って何かしろ!」「外からデータを買ってきて、何かできないか?」と言われても、言われた方が唖然とするだけではないでしょうか。すでにデータ活用のアイディアがあるのなら問題ないかと思います多くの場合、会社の上の方から降ってくるようです。

 データは上手く使えば「強力な武器」になります。武器は、その武器を使う戦場が無ければ使いようがありません。武器を使う場面がなければ、武器が強力だろうが貧弱だろうがどうでもよいことになります。なぜならば、武器を使う機会がないからです。ここでいう戦場とは、ビジネス上の課題解決の場面になります。

 今回は、「データ分析は脇役、課題解決の道具」というお話しをします。

1. データ分析:主役は誰だ!

 今までデータ活用やその分析を積極的に実施していなかった企業が、データ分析で何かしようと取り組み始めた頃、多くみられたのが主役をデータ分析そのものにしてしまうこと。データ分析はあくまでも課題解決の手段の一つに過ぎません。

 例えば、データを使って売上アップ! コストカット! 生産性向上! 効率化! などが達成することを目的とします。別にデータを上手く使おうが、全く使う機会がなかろうが、これらが達成されれば十分なはずです。

 データを積極的に使うからには、データを全く使うことがない場合に比べ、何かが大きく異ならなければ分析する意味はないでしょう。例えば、データを使うことで、スピードが上がった、精度が向上した、少ない人数で業務が可能になった、意思疎通が容易になったなど、何かしら違いを作る必要があります。

2. データ分析:データは脇役でいいが、使い方次第で迷脇役に…

 要するに、データ分析は脇役なのです。単なる脇役ではなく、名脇役です。しかし、上手く使ってあげないと名脇役が迷脇役になってしまいます。

 例えば、流行りのデータ分析のアルゴリズムであるディープラーニング。ディープラーニングは単なるデータ分析の一手法に過ぎません。手段であるデータ分析の中の、選択肢の一つです。これが主役になってしまうという現象が、ここ数年多々見受けられます。ディープラーニングの技術を使って何かしろ!という現象です。

 画像解析系のデータ分析の世界ではディープラーニングの相性はかなり良いと思いますが、画像解析系のデータ分析の世界でさえ、ディープラーニングでやっていたことを、それ以外で行うようになったら、上手くいったというケースも少なくありません。

 ディープラーニングと比較的相性の良くない時系列解析の世界で、ディープラーニングで強引に予測モデルを作っても、大抵の場合、ろくなことになりません。これは、ディープラーニングのことを、ニューラルネットワークやディープニューラルネットワークなどといわれていた時代から分かっていたことですが、なぜかチャレンジしてしまうようです。その行為自体は悪くはありませんが、ディープラーニングありきで他のモデルの可能性をあまり考えないのは、何とももったいないことです。

3. データ分析:課題先行で考える逆算思考

 データ分析が、迷惑な脇役にならないようにするにはどうしたらよいのでしょうか。特別なことはありません。単純に課題先行、つまり逆算思考で考えていけば済みます。ここでいう逆算思考とは、以下のような考え方です。

  • まず解決すべき課題を考える
  • その課題が解決された状態を考える
  • 課題を解決するためには何をすべきか考える
  • 仮にデータ分析が必要ならば、どのような分析が必要か考える
  • 分析をするために必要なデータは何かを考える

 どのような課題を解決すべきか、また、その課題が解決された状態から逆算してどのようなデータ分析を行うべきなのかを、考えていく思考法です。

 ここで注意点が二つあります。

  • 先に課題を考える
  • 課題を考える際、データ分析ということは全く考えない

 つまり、データを使うか否かに関係なく「課題を洗い出す」ということです。

4. データ分析:課題が解決すれば、データ分析を使う必要はない

 洗い出した課題の中には、次のことが混在しています。

  • データを使う必要が全くない課題
  • データ分析をフル活用したほうがよい課題
  • ちょっとだけデータの力を借りた方がよい課題 

 正直、「データ分析をフル活用したほうがよい課題」はほとんどありません。

 データ分析で何かやるぞ!という掛け声が上がった時、多くの場合、この「データ分析をフル活用したほうがよい課題」を探している気がします。大多数の課題は「ちょっとだけデータの力を借りた方がよい課題」です。ただ「ちょっとだけデータの力を借りた方がよい課題」をいきなり見つけるのは至難の業で、データ分析実務での活用経験が必要になります。その実務でのデータ分析の活用経験の有無に関係なく「ちょっとだけデータの力を借りた方がよい課題」を見つける方法が、先ほど言及した逆算思考です。

 極論を言ってしまえば、課題が解決すれば、データ分析を使う必要はありません。

 そして、課題が解決すれば喜ばれますし、大きなビジネス成果の一つとなることでしょう。データ分析は道具に過ぎませんし、無理して道具を使う必要もありません。紙を切るためにノコギリを使う必要がないのと同じです。逆に、紙を切るのにノコギリを使おうとすると、かなり大変なことでしょう。データ分析も同じです。無理やり使おうとすると、かなり大変な作業になります。何をいいたいかというと、データ分析を使うかどうかに関係なく課題を解決すればよい!ということです。

 幸いにも、多くの課題は「ちょっとだけデータの力を借りた方がよい課題」です。このような課題は「データ分析以外でやることがいっぱい」+「データ分析でやることがちょっとだけ」という感じでしょう。つまり、課題解決の大部分の動きは、データ分析と関係ないことを行うということです。このことを認識することは非常に重要です。

 

5. データ分析は脇役、課題解決の道具

 今回は「データ分析は脇役、課題解決の道具」というお話しをしました。

 今までデータ活用やその分析を積極的に実施していなかった企業に多いのが、主役をデータ分析にしてしまうこ...

データ分析

◆ データ分析は脇役、課題解決の道具

 「社内に溜まっているデータを使って何かしろ!」「外からデータを買ってきて、何かできないか?」と言われても、言われた方が唖然とするだけではないでしょうか。すでにデータ活用のアイディアがあるのなら問題ないかと思います多くの場合、会社の上の方から降ってくるようです。

 データは上手く使えば「強力な武器」になります。武器は、その武器を使う戦場が無ければ使いようがありません。武器を使う場面がなければ、武器が強力だろうが貧弱だろうがどうでもよいことになります。なぜならば、武器を使う機会がないからです。ここでいう戦場とは、ビジネス上の課題解決の場面になります。

 今回は、「データ分析は脇役、課題解決の道具」というお話しをします。

1. データ分析:主役は誰だ!

 今までデータ活用やその分析を積極的に実施していなかった企業が、データ分析で何かしようと取り組み始めた頃、多くみられたのが主役をデータ分析そのものにしてしまうこと。データ分析はあくまでも課題解決の手段の一つに過ぎません。

 例えば、データを使って売上アップ! コストカット! 生産性向上! 効率化! などが達成することを目的とします。別にデータを上手く使おうが、全く使う機会がなかろうが、これらが達成されれば十分なはずです。

 データを積極的に使うからには、データを全く使うことがない場合に比べ、何かが大きく異ならなければ分析する意味はないでしょう。例えば、データを使うことで、スピードが上がった、精度が向上した、少ない人数で業務が可能になった、意思疎通が容易になったなど、何かしら違いを作る必要があります。

2. データ分析:データは脇役でいいが、使い方次第で迷脇役に…

 要するに、データ分析は脇役なのです。単なる脇役ではなく、名脇役です。しかし、上手く使ってあげないと名脇役が迷脇役になってしまいます。

 例えば、流行りのデータ分析のアルゴリズムであるディープラーニング。ディープラーニングは単なるデータ分析の一手法に過ぎません。手段であるデータ分析の中の、選択肢の一つです。これが主役になってしまうという現象が、ここ数年多々見受けられます。ディープラーニングの技術を使って何かしろ!という現象です。

 画像解析系のデータ分析の世界ではディープラーニングの相性はかなり良いと思いますが、画像解析系のデータ分析の世界でさえ、ディープラーニングでやっていたことを、それ以外で行うようになったら、上手くいったというケースも少なくありません。

 ディープラーニングと比較的相性の良くない時系列解析の世界で、ディープラーニングで強引に予測モデルを作っても、大抵の場合、ろくなことになりません。これは、ディープラーニングのことを、ニューラルネットワークやディープニューラルネットワークなどといわれていた時代から分かっていたことですが、なぜかチャレンジしてしまうようです。その行為自体は悪くはありませんが、ディープラーニングありきで他のモデルの可能性をあまり考えないのは、何とももったいないことです。

3. データ分析:課題先行で考える逆算思考

 データ分析が、迷惑な脇役にならないようにするにはどうしたらよいのでしょうか。特別なことはありません。単純に課題先行、つまり逆算思考で考えていけば済みます。ここでいう逆算思考とは、以下のような考え方です。

  • まず解決すべき課題を考える
  • その課題が解決された状態を考える
  • 課題を解決するためには何をすべきか考える
  • 仮にデータ分析が必要ならば、どのような分析が必要か考える
  • 分析をするために必要なデータは何かを考える

 どのような課題を解決すべきか、また、その課題が解決された状態から逆算してどのようなデータ分析を行うべきなのかを、考えていく思考法です。

 ここで注意点が二つあります。

  • 先に課題を考える
  • 課題を考える際、データ分析ということは全く考えない

 つまり、データを使うか否かに関係なく「課題を洗い出す」ということです。

4. データ分析:課題が解決すれば、データ分析を使う必要はない

 洗い出した課題の中には、次のことが混在しています。

  • データを使う必要が全くない課題
  • データ分析をフル活用したほうがよい課題
  • ちょっとだけデータの力を借りた方がよい課題 

 正直、「データ分析をフル活用したほうがよい課題」はほとんどありません。

 データ分析で何かやるぞ!という掛け声が上がった時、多くの場合、この「データ分析をフル活用したほうがよい課題」を探している気がします。大多数の課題は「ちょっとだけデータの力を借りた方がよい課題」です。ただ「ちょっとだけデータの力を借りた方がよい課題」をいきなり見つけるのは至難の業で、データ分析実務での活用経験が必要になります。その実務でのデータ分析の活用経験の有無に関係なく「ちょっとだけデータの力を借りた方がよい課題」を見つける方法が、先ほど言及した逆算思考です。

 極論を言ってしまえば、課題が解決すれば、データ分析を使う必要はありません。

 そして、課題が解決すれば喜ばれますし、大きなビジネス成果の一つとなることでしょう。データ分析は道具に過ぎませんし、無理して道具を使う必要もありません。紙を切るためにノコギリを使う必要がないのと同じです。逆に、紙を切るのにノコギリを使おうとすると、かなり大変なことでしょう。データ分析も同じです。無理やり使おうとすると、かなり大変な作業になります。何をいいたいかというと、データ分析を使うかどうかに関係なく課題を解決すればよい!ということです。

 幸いにも、多くの課題は「ちょっとだけデータの力を借りた方がよい課題」です。このような課題は「データ分析以外でやることがいっぱい」+「データ分析でやることがちょっとだけ」という感じでしょう。つまり、課題解決の大部分の動きは、データ分析と関係ないことを行うということです。このことを認識することは非常に重要です。

 

5. データ分析は脇役、課題解決の道具

 今回は「データ分析は脇役、課題解決の道具」というお話しをしました。

 今までデータ活用やその分析を積極的に実施していなかった企業に多いのが、主役をデータ分析にしてしまうことです。データ分析はあくまでも課題解決の手段の一つに過ぎません。手段の一つなので、別の手段でも良いのです。端的にいえば、データ分析は脇役で、使うからには違いを作る必要があり、実際に違いを作れるので注目されているわけです。つまり、データ分析は名脇役です。決して、迷脇役ではありません。迷惑な脇役にならないように気を付ける必要があります。そのような事にならないためには、課題先行で逆算思考で考えていけば良いでしょう。

 逆算思考とは、どのような課題を解決すべきかや、その課題が解決された状態から逆算して、必要なデータ分析や、必要なデータを考えていく思考法です。ということは、最初にすべき事はデータ分析を使うかどうかに関係なく、単純にその組織の課題を洗い出すことから始めます。

 データ分析は名脇役ですが、課題解決の道具に過ぎませんし、無理して使う必要もありません。課題が解決すれば、データ分析を使う必要はありません。しかし、データを上手く使って何かやるぞ!と意気込む企業の多くが「データ分析をフル活用したほうがよい課題」をいきなり探してしまっている気がします。そのような課題は稀です。多くの課題は「ちょっとだけデータの力を借りた方がよい課題」で、実際に「データ分析以外でやることがいっぱい」+「データ分析でやることがちょっとだけ」という感じになります。つまり、データ分析だけでは課題解決は程遠く、課題解決のためには、データ分析と関係ないことを多く行っていくということです。

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この記事の著者

高橋 威知郎

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)


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