データ活用の勘所 データ分析講座(その25)

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情報マネジメント

◆ Excelレベルの分析をものにしたとき、データ活用の世界は変わる

 多くの企業は、ビッグデータを使いこなし活用しているのではなく、ビッグデータに振り回されているようにさえ見えます。現実は、問題の根はもっと深いのです。ビッグデータに振り回され活用できないのではありません。そもそも、リトルデータすら活用する力がないのです。ビッグデータ云々以前の問題なのです。要するに、リトルデータ活用すらできない企業や人が、ビッグデータ活用を実現するのは無理です。問題の根にあるのは「データ活用の勘所」を掴めていないという問題です。データ活用の上手くいっていない企業の多くは、「データ活用の勘所」を掴めていません。

1. データ分析:溜めたデータを「どう活かすのか(活用場面)」

 データを「溜めればよい」というものではありません。溜めたデータを「見える化すればよい」というものでもありません。データを「溜め」そして「見える化」しただけで収益が拡大し効率化するほど、ビジネスは簡単ではないでしょう。データを「溜め」そして「見える化」する云々の前に、溜めたデータを「どう活かすのか(活用場面)」が分かっていないと、溜めたデータを現場で活かしようがありません。

 要するに、データ活用に向けて動き出すとき、溜めたデータを「どう活かすのか(活用場面)」を、最初に考え検討すべきなのです。データを蓄積してから、データを「どう活かすのか(活用場面)」を考えるようではいけません。なぜならば、溜まったデータを見ても「どのような分析をすればよいのか」などは見えてこないからです。逆に溜めたデータを「どう活かすのか(活用場面)」さえ分かれば、そこから逆算することで、「どのような分析をすればよいのか」やそもそも「どのようなデータを溜めればよいのか」が見えてきます。問題は、想像力だけで「どう活かすのか(活用場面)」を考え描くことです。

2. データ分析:問題は想像力?

 考え描くことは、そう簡単にできるものでしょうか。これから本格的にデータ活用をしようとする企業や部署、人にとって、想像力だけで「どう活かすのか(活用場面)」を考え描くことは、越えがたいハードルのように思えてきます。しかし、実はそれほど高いハードルではありません。では、何をすれば、そのハードルを越えられるのでしょうか。

 ハードルの超え方には色々あります。やり方の一つとして、Excelレベルで扱えるリトルデータを使い、「実際に手を動かしデータ活用を実現する」というやり方があります。リトルデータからデータ活用を始め、徐々にデータの種類と量を増やし、手に入るあらゆるデータを使い目指すビッグデータ活用を実現するのです。

3. データ分析:最初からビッグデータ症候群

 しかし、すでにビッグデータが蓄積されているなら、最初から手に入るあらゆるデータを使い、データ活用を始めたほうが手っ取り早いと感じる人も少なくないでしょう。確かに、「収益の拡大」と「効率性の向上」といったビジネス成果を出した経験があれば、ビッグデータ活用から始めてもよいかもしれません。データ活用の勘所を掴んでいるからです。しかし、ビジネス成果を出した経験が乏しいのであれば、止めたほうがよいでしょう。おそらく上手くいきません。

 さらに、経験が乏しい場合、いきなり大量データを相手にデータ活用を始めると、データ量の処理に時間と労力と体力が奪われ、多くの場合疲弊してしまいます。最悪、データ量との格闘(例:データの整備作業や集計作業、分析作業、レポート化作業など)に満足し終わってしまい、「収益の拡大」と「効率性の向上」などといったビジネス成果へたどり着きません。そうならないためにも、何はともあれExcelレベルのリトルデータ活用から始めましょう。

4. データ分析:Excelレベルのリトルデータ活用

 もし、Excelレベルのリトルデータ活用で躓くようであれば、そこをどうにかすべきです。なぜならば、リトルデータすら活用できない企業や人が、ミドルデータやビッグデータなどのより多くのデータを使い、ビジネス成果を出すことが無理だからです。リトルデータ活用で「収益の拡大」と「効率性の向上」を実現できたとき、「データ活用の勘所」を掴む感覚が分かり、データの実務への活かし方の見当が付くようになっているはずです。そのときビッグデータ活用にチャレンジすべきです。ビッグデータであろうが、リトルデータであろうが、データ活用で成果に結び付けるという意味では、勘所はほぼ同じです。ビッグデータ活用を目指すなら、リトルデータから始めましょう。

5. データ活用の世界は変わる

 Excelレベルの分析をものにしたとき、データ活用の世界は変わります。ビッグデータとビッグデータの違いは、極端にいうとデータの「量」と「種類」が多いか少ないかだけの違いでしかないでしょう。データの量や種類が増えるほど、そのためのIT投資額は増え、確保すべき人財の数も増えます。安価になったとはいえIT投資は馬鹿にならないし、人財は急には確保できません。そもそも、ビジネス成果を得るかどうか分からないことに対し、巨額のIT投資をする企業は稀でしょう。ある程度のIT投資に踏み切らせるためにも、Excelレベルのリトルデータ活用の実績は分かりやすく、社内を納得させる好材料になります。

 人財は、外部の企業に頼むのも手ですが、自社内で育成したほうがよいでしょう。外からでは分からない社内事情や、社外の人間では汲み取れない社内文化などを、社外の人間が理解しデータ活用を進めるには限界があるからです。外部の手を借りるにしても、社内に人財は必要です。では、どうすれば人財を確保できるのでしょうか。手っ取り早く確実に、社内にデータ活用人財を増やす方法があります。それは、...

 

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◆ Excelレベルの分析をものにしたとき、データ活用の世界は変わる

 多くの企業は、ビッグデータを使いこなし活用しているのではなく、ビッグデータに振り回されているようにさえ見えます。現実は、問題の根はもっと深いのです。ビッグデータに振り回され活用できないのではありません。そもそも、リトルデータすら活用する力がないのです。ビッグデータ云々以前の問題なのです。要するに、リトルデータ活用すらできない企業や人が、ビッグデータ活用を実現するのは無理です。問題の根にあるのは「データ活用の勘所」を掴めていないという問題です。データ活用の上手くいっていない企業の多くは、「データ活用の勘所」を掴めていません。

1. データ分析:溜めたデータを「どう活かすのか(活用場面)」

 データを「溜めればよい」というものではありません。溜めたデータを「見える化すればよい」というものでもありません。データを「溜め」そして「見える化」しただけで収益が拡大し効率化するほど、ビジネスは簡単ではないでしょう。データを「溜め」そして「見える化」する云々の前に、溜めたデータを「どう活かすのか(活用場面)」が分かっていないと、溜めたデータを現場で活かしようがありません。

 要するに、データ活用に向けて動き出すとき、溜めたデータを「どう活かすのか(活用場面)」を、最初に考え検討すべきなのです。データを蓄積してから、データを「どう活かすのか(活用場面)」を考えるようではいけません。なぜならば、溜まったデータを見ても「どのような分析をすればよいのか」などは見えてこないからです。逆に溜めたデータを「どう活かすのか(活用場面)」さえ分かれば、そこから逆算することで、「どのような分析をすればよいのか」やそもそも「どのようなデータを溜めればよいのか」が見えてきます。問題は、想像力だけで「どう活かすのか(活用場面)」を考え描くことです。

2. データ分析:問題は想像力?

 考え描くことは、そう簡単にできるものでしょうか。これから本格的にデータ活用をしようとする企業や部署、人にとって、想像力だけで「どう活かすのか(活用場面)」を考え描くことは、越えがたいハードルのように思えてきます。しかし、実はそれほど高いハードルではありません。では、何をすれば、そのハードルを越えられるのでしょうか。

 ハードルの超え方には色々あります。やり方の一つとして、Excelレベルで扱えるリトルデータを使い、「実際に手を動かしデータ活用を実現する」というやり方があります。リトルデータからデータ活用を始め、徐々にデータの種類と量を増やし、手に入るあらゆるデータを使い目指すビッグデータ活用を実現するのです。

3. データ分析:最初からビッグデータ症候群

 しかし、すでにビッグデータが蓄積されているなら、最初から手に入るあらゆるデータを使い、データ活用を始めたほうが手っ取り早いと感じる人も少なくないでしょう。確かに、「収益の拡大」と「効率性の向上」といったビジネス成果を出した経験があれば、ビッグデータ活用から始めてもよいかもしれません。データ活用の勘所を掴んでいるからです。しかし、ビジネス成果を出した経験が乏しいのであれば、止めたほうがよいでしょう。おそらく上手くいきません。

 さらに、経験が乏しい場合、いきなり大量データを相手にデータ活用を始めると、データ量の処理に時間と労力と体力が奪われ、多くの場合疲弊してしまいます。最悪、データ量との格闘(例:データの整備作業や集計作業、分析作業、レポート化作業など)に満足し終わってしまい、「収益の拡大」と「効率性の向上」などといったビジネス成果へたどり着きません。そうならないためにも、何はともあれExcelレベルのリトルデータ活用から始めましょう。

4. データ分析:Excelレベルのリトルデータ活用

 もし、Excelレベルのリトルデータ活用で躓くようであれば、そこをどうにかすべきです。なぜならば、リトルデータすら活用できない企業や人が、ミドルデータやビッグデータなどのより多くのデータを使い、ビジネス成果を出すことが無理だからです。リトルデータ活用で「収益の拡大」と「効率性の向上」を実現できたとき、「データ活用の勘所」を掴む感覚が分かり、データの実務への活かし方の見当が付くようになっているはずです。そのときビッグデータ活用にチャレンジすべきです。ビッグデータであろうが、リトルデータであろうが、データ活用で成果に結び付けるという意味では、勘所はほぼ同じです。ビッグデータ活用を目指すなら、リトルデータから始めましょう。

5. データ活用の世界は変わる

 Excelレベルの分析をものにしたとき、データ活用の世界は変わります。ビッグデータとビッグデータの違いは、極端にいうとデータの「量」と「種類」が多いか少ないかだけの違いでしかないでしょう。データの量や種類が増えるほど、そのためのIT投資額は増え、確保すべき人財の数も増えます。安価になったとはいえIT投資は馬鹿にならないし、人財は急には確保できません。そもそも、ビジネス成果を得るかどうか分からないことに対し、巨額のIT投資をする企業は稀でしょう。ある程度のIT投資に踏み切らせるためにも、Excelレベルのリトルデータ活用の実績は分かりやすく、社内を納得させる好材料になります。

 人財は、外部の企業に頼むのも手ですが、自社内で育成したほうがよいでしょう。外からでは分からない社内事情や、社外の人間では汲み取れない社内文化などを、社外の人間が理解しデータ活用を進めるには限界があるからです。外部の手を借りるにしても、社内に人財は必要です。では、どうすれば人財を確保できるのでしょうか。手っ取り早く確実に、社内にデータ活用人財を増やす方法があります。それは、リトルデータ活用の経験を積ませ、データ活用の勘所を掴む感覚を養うことです。

6. データ分析:やらない理由はない

 データ活用でビジネス成果をだしたいのであれば、Excelレベルのリトルデータ活用を、やらない理由はありません。社内にデータ活用の実績と自信が蓄積され、さらにデータ活用のための人財も育つからです。Excelレベルのリトルデータであれば、大規模なIT投資は必要ありません。Excelとデータさえあれば、すぐにでも始められます。小回りが利くので、軌道修正も早くビジネス成果が出やすく、データ活用のスキルが身につき人財も育ちます。

 要するに、Excelレベルのリトルデータ活用は、後々のビッグデータ活用に向けた大きな第一歩です。しかし、Excelで扱えるレベルのリトルデータといっても、データです。そのようなデータを分析するには、それなりの分析ツールなどが必要になります。分析ツールと聞くとハードルが高そうに聞こえますが、多くのビジネスパーソンが日常的に活用している、Excelも立派な分析ツールです。

 もちろん、Excelでできるデータ分析は限られます。それでも、それなりのデータ分析はできます。そして、ビッグデータであれリトルデータであれ、ビジネス成果をあげていくためには、継続した運用が必要になります。では、どうすればよいのでしょうか。次回に続きます。

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この記事の著者

高橋 威知郎

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)

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