データ分析と指標 データ分析講座(その22)

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データ分析

◆ データ分析時にどの指標(KPIなど)を最重視するかで、ビジネス成果は変化する

 この間お会いした、売上重視の企業体質を利益重視に変えたいと考えている、ある企業の営業本部長のちょっとした愚痴です。「弊社は伝統的に売上重視なんだけど、営業データ分析を推し進めたら、売上重視が酷くなった」データ分析の第一歩は、蓄積されたデータを集計し見ることです。そのような集計結果を定期的に見ることを、モニタリングといいます。多くの企業では、指標(KPIなど)を設計した後、指標の数字をモニタリングすることになります。しかし、多くの企業では、主にモニタリングすべき指標(KPIなど)を決めるとき、何気なく決めているようです。何気なく決めた主なモニタリング指標が、ビジネス成果を大きく左右することがあります。

1. どの指標(KPIなど)を最重視するのか

 どの指標(KPIなど)を最重視するのかで、ビジネス成果は大きく変化します。データ活用を積極的にやればやるほど、ビジネス成果は大きく変化します。よくあるのが、売上高や受注件数を最重視するケース。どうしても、売上高や受注件数に目がいきがちです。売上高や受注件数を最重視したままデータ分析を積極的に取り入れると、恐ろしい分析結果が出てきます。人の目が常に介入していれば問題ないかもしれませんが、最近はMA(マーケティング・オートメーション)という言葉がある通り、できるだけデータを活用し自動化しようという動きがあります。最重視する指標(KPIなど)を、売上高や受注件数などに何となく決めたがために、とんでもないビジネス成果になることがあります。次の3つのケースで、説明します。

  •  受注件数を最重視する
  •  利益率を最重視する
  •  限界利益を最重視する

2. 受注件数を最重視すると赤字になるかもしれない

 あなたが営業パーソンだとします。営業成績が「受注件数」だけで評価されるとしたら、どのような営業活動をするでしょうか?私であれば、最も売れやすい商品を大きく値引きして売ります。例えば、90%引き。あまり値引きしすぎると怪しまれるので、ほどほどの値引きで売ります。このあたりはデータ分析をして、怪しまれず最も受注件数が伸びる値引きを分析をすればよいでしょう。恐らく、原価割れして赤字になることでしょう。しかし、受注件数は大きく伸びることでしょう。要するに、受注件数を最重視すると赤字になるかもしれません。受注件数だけを考えデータ分析をすると、このような受注件数が大きく伸びるが大きく赤字になる、という結果になることでしょう。

3. 利益率を最重視すると、売上高が小さくなるかもしれない

 あなたが営業パーソンだとします。営業成績が「限界利益率」だけで評価されるとしたら、どのような営業活動をするでしょうか?私であれば、売れやすい商材の中で、最も限界利益率の高い商材を一つ売って、後は何もしません。ちなみに、限界利益とは、売上高から変動費を引いた利益のことです。変動費とは、販売数量などと比例して増えるコストで、材料費や仕入れ費などです。つまり、限界利益とはその商材を売りことで確保される利益のことです。このように、利益率を最重視すると、企業の利益率は高くなるかもしれませんが、売上高は小さくなるかもしれません。

4. 限界利益を最重視すると、いいみたい

 あなたが営業パーソンだとします。営業成績が「限界利益」だけで評価されるとしたら、どのような営業活動をするでしょうか?私であれば、売上高が下がってでも、限界利益率の低い商材を売ることを止め、できるだけ売りやすく限界利益率の高い商材を売ろうとします。営業やマーケティングなどの活動としては、恐らく限界利益を最重視するのがよいでしょう。このように、どの指標(KPIなど)を最重視するかで、ビジネス成果は変化します。現実は、このように極端にならないとは思いますが、今後データ活用が自動化されMA(マーケティング・オートメーション)などが進化すると、人の目で触れないところで、おかしなデータ分析結果を出し、そして実現しようとするかもしれません。

5. データ分析時にどの指標(KPIなど)を最重視するかは、慎重に選ぼう

 データ分析時にどの指標(KPIなど)を最重視するかで、得られるビジネス成果は大きく異なります。そのため、どの指標(KPIなど)を最重視するかは、何となく選ぶのではなく、慎重に選んだ方が良いでしょう。営業やマーケティングなどの部署が選ぶと、ど...

 

データ分析

◆ データ分析時にどの指標(KPIなど)を最重視するかで、ビジネス成果は変化する

 この間お会いした、売上重視の企業体質を利益重視に変えたいと考えている、ある企業の営業本部長のちょっとした愚痴です。「弊社は伝統的に売上重視なんだけど、営業データ分析を推し進めたら、売上重視が酷くなった」データ分析の第一歩は、蓄積されたデータを集計し見ることです。そのような集計結果を定期的に見ることを、モニタリングといいます。多くの企業では、指標(KPIなど)を設計した後、指標の数字をモニタリングすることになります。しかし、多くの企業では、主にモニタリングすべき指標(KPIなど)を決めるとき、何気なく決めているようです。何気なく決めた主なモニタリング指標が、ビジネス成果を大きく左右することがあります。

1. どの指標(KPIなど)を最重視するのか

 どの指標(KPIなど)を最重視するのかで、ビジネス成果は大きく変化します。データ活用を積極的にやればやるほど、ビジネス成果は大きく変化します。よくあるのが、売上高や受注件数を最重視するケース。どうしても、売上高や受注件数に目がいきがちです。売上高や受注件数を最重視したままデータ分析を積極的に取り入れると、恐ろしい分析結果が出てきます。人の目が常に介入していれば問題ないかもしれませんが、最近はMA(マーケティング・オートメーション)という言葉がある通り、できるだけデータを活用し自動化しようという動きがあります。最重視する指標(KPIなど)を、売上高や受注件数などに何となく決めたがために、とんでもないビジネス成果になることがあります。次の3つのケースで、説明します。

  •  受注件数を最重視する
  •  利益率を最重視する
  •  限界利益を最重視する

2. 受注件数を最重視すると赤字になるかもしれない

 あなたが営業パーソンだとします。営業成績が「受注件数」だけで評価されるとしたら、どのような営業活動をするでしょうか?私であれば、最も売れやすい商品を大きく値引きして売ります。例えば、90%引き。あまり値引きしすぎると怪しまれるので、ほどほどの値引きで売ります。このあたりはデータ分析をして、怪しまれず最も受注件数が伸びる値引きを分析をすればよいでしょう。恐らく、原価割れして赤字になることでしょう。しかし、受注件数は大きく伸びることでしょう。要するに、受注件数を最重視すると赤字になるかもしれません。受注件数だけを考えデータ分析をすると、このような受注件数が大きく伸びるが大きく赤字になる、という結果になることでしょう。

3. 利益率を最重視すると、売上高が小さくなるかもしれない

 あなたが営業パーソンだとします。営業成績が「限界利益率」だけで評価されるとしたら、どのような営業活動をするでしょうか?私であれば、売れやすい商材の中で、最も限界利益率の高い商材を一つ売って、後は何もしません。ちなみに、限界利益とは、売上高から変動費を引いた利益のことです。変動費とは、販売数量などと比例して増えるコストで、材料費や仕入れ費などです。つまり、限界利益とはその商材を売りことで確保される利益のことです。このように、利益率を最重視すると、企業の利益率は高くなるかもしれませんが、売上高は小さくなるかもしれません。

4. 限界利益を最重視すると、いいみたい

 あなたが営業パーソンだとします。営業成績が「限界利益」だけで評価されるとしたら、どのような営業活動をするでしょうか?私であれば、売上高が下がってでも、限界利益率の低い商材を売ることを止め、できるだけ売りやすく限界利益率の高い商材を売ろうとします。営業やマーケティングなどの活動としては、恐らく限界利益を最重視するのがよいでしょう。このように、どの指標(KPIなど)を最重視するかで、ビジネス成果は変化します。現実は、このように極端にならないとは思いますが、今後データ活用が自動化されMA(マーケティング・オートメーション)などが進化すると、人の目で触れないところで、おかしなデータ分析結果を出し、そして実現しようとするかもしれません。

5. データ分析時にどの指標(KPIなど)を最重視するかは、慎重に選ぼう

 データ分析時にどの指標(KPIなど)を最重視するかで、得られるビジネス成果は大きく異なります。そのため、どの指標(KPIなど)を最重視するかは、何となく選ぶのではなく、慎重に選んだ方が良いでしょう。営業やマーケティングなどの部署が選ぶと、どうしても売上高や受注件数などの分かりやすい指標を、最重視しがちです。売上高も受注件数も重要な指標には違いはありませんが、限界利益を増やすために重視すべき指標と考えるとよいでしょう。もちろん、ビジネスの考え方によって、何を最重視するのかは変わってきます。

 ある企業では、国内は限界利益で、海外(アジア圏)は売上高を採用していました。理由は、飽和した国内市場では利益を確保することを最優先にし、海外(アジア圏)の市場はまだまだこれからなので利益よりも売上規模を大きくする(シェアを拡大する)ことを最優先にしたからです。このとき、海外(アジア圏)で守るべき利益率を設定していました。一概に、限界利益を最重視すべきとも言えませんが、データ分析時にどの指標(KPIなど)を最重視するかで、ビジネス成果が大きく変わるので、慎重に選んだ方がよいでしょう。データ活用を推し進めると、最重視する指標(KPIなど)を最大化するためのデータ分析が積極的になされ、先ほど上げた極端な例に近い現象が、起こるとも限らないからです。

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この記事の著者

高橋 威知郎

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)

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