営業を確率で考える データ分析講座(その5)

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情報マネジメント

◆ 営業は失注しても、確率で考えれば落ち込めない

 「2人の極端な部下がいるけど、どちらも営業成績よくなくて……」1人は失注すると「やる気」がなくなり。もう1人は、失注すると逆に無駄に「燃える」というのです。ものすごく真逆な2人です。共通するのは営業成績がよくないこと。確かに、失注の連絡ほど落ち込むものはありません。恐らく2人とも、失注の連絡をもらったとき、落ち込んだことでしょう。その連絡をダメージが大きく、やる気を失う人もいれば、今度こそは燃えてく空回りする人もいます。そのような中、営業成績をぐんぐん伸ばしている新人がいるというのです。

1. 彼はスーパー営業パーソンなのか?

 その企業では、毎年4月~6月にかけて新人研修があります。その1つに営業研修がありました。そこですごい新人が現れたというのです。何がすごいのかというと、ガンガン案件をとってくるのです。同期の新人なんて目ではありません。長年営業をしている営業部員を差し置いて、ガンガン案件をとってくるのです。まさに彼はスーパー営業パーソン。なかなか、即戦力で使える新人はいません。その中で、売上を直接作る営業で即戦力で使えるとなると、それはスゴイことです。

2. それでも、やりたかった開発部署にいきました

 彼は情報系の工学部出身で、アプリ開発をしたくてその企業に入社しました。研修中に営業でトップの成績を収めたにもかかわらず、アプリ開発の部署を希望しました。彼は大学院をでていません。アプリ開発の部署は大学院出身者がほとんどです。情報工学や数理工学、計数工学、数学などの博士号や修士号の取得者の巣窟です。学部卒の彼がいきなり目が出ることはないだろうと、周囲はもったいないと感じたそうです。しかし、本人が強く希望していることなので、希望通りアプリ開発の部署に配属。世の中器用な人もいるものです。

 彼はアプリ開発の部署でも、ガンガンという感じではないですが、博士号や修士号をもった先輩を尻目に、着実に成果を生み出していきました。彼は数年後会社を辞めました。営業もできてアプリ開発もできるなら、自分でアプリ開発して売ればいいだけです。そんな彼に、この間たまたま会う機会がありました。

3. 営業を確率で考えるということ

 どうやって営業成績をあげたのか。疑問はその1点です。彼に聞いてみました。彼はこう言いました。「営業って確率論ですよね。 何をすれば何件アポイントメントが取れる。 何件提案すれば何件受注できる。それが見えてきたの、営業って数学的で面白いなと思いました」彼は工学部出身ですが、数学が大好きです。受注プロセスを確率的に考えて、それを実践したら、案件が確率通りに受注できたというのです。

 例えば、受注プロセスを以下のようだとします。

  • 「訪問」→「提案」→「受注」

 訪問して、提案して、受注する。何が確率論かというと、以下の3つの確率がこの受注プロセスにはあります。

  • 最初の「訪問できる確率」
  • 訪問後に「提案できる確率」
  • 提案後に「受注する確率」

 100件のプロスペクト(見込み案件)のリストがあったとして……

  • 最初の「訪問できる確率」 : 50%(0.5)
  • 訪問後に「提案できる確率」: 90%(0.9)
  • 提案後に「受注する確率 」: 60%(0.5)

 だとすると、最終的に受注できる確率は、27%(0.27=0.5×0.9×0.6)です。したがって、受注できる件数は、27件(27=0.27×100件)

 ちなみに、この企業では、イベント出展やセミナー開催、サイトの資料ダウンロードなどでプロスペクト(見込み案件)のリストを作成していました。彼はこの確率の存在をすぐ知りました。そして、その確率通りに受注できたことに、今まで学んだ数学が社会で活かせるという「喜び」を感じたそうです。

 1日10件から20件アポイントメントの電話をかけ、5件から10件の訪問の約束を漕ぎ着け、訪問したうち4件から9件提案することができ、最終的に3件から5件受注する。この繰り返しを彼はしていただけです。確率論で見ていたので、アポイントメントを断られようが、提案を拒否されようが、クロージングで失敗しようが、感情で的にそれほど引きずらなかったそうです。

4. 失注しても、確率で考えれば落ち込めない

 つまり、失注の連絡をもらったとき、必要以上に落ち込ん...

 

情報マネジメント

◆ 営業は失注しても、確率で考えれば落ち込めない

 「2人の極端な部下がいるけど、どちらも営業成績よくなくて……」1人は失注すると「やる気」がなくなり。もう1人は、失注すると逆に無駄に「燃える」というのです。ものすごく真逆な2人です。共通するのは営業成績がよくないこと。確かに、失注の連絡ほど落ち込むものはありません。恐らく2人とも、失注の連絡をもらったとき、落ち込んだことでしょう。その連絡をダメージが大きく、やる気を失う人もいれば、今度こそは燃えてく空回りする人もいます。そのような中、営業成績をぐんぐん伸ばしている新人がいるというのです。

1. 彼はスーパー営業パーソンなのか?

 その企業では、毎年4月~6月にかけて新人研修があります。その1つに営業研修がありました。そこですごい新人が現れたというのです。何がすごいのかというと、ガンガン案件をとってくるのです。同期の新人なんて目ではありません。長年営業をしている営業部員を差し置いて、ガンガン案件をとってくるのです。まさに彼はスーパー営業パーソン。なかなか、即戦力で使える新人はいません。その中で、売上を直接作る営業で即戦力で使えるとなると、それはスゴイことです。

2. それでも、やりたかった開発部署にいきました

 彼は情報系の工学部出身で、アプリ開発をしたくてその企業に入社しました。研修中に営業でトップの成績を収めたにもかかわらず、アプリ開発の部署を希望しました。彼は大学院をでていません。アプリ開発の部署は大学院出身者がほとんどです。情報工学や数理工学、計数工学、数学などの博士号や修士号の取得者の巣窟です。学部卒の彼がいきなり目が出ることはないだろうと、周囲はもったいないと感じたそうです。しかし、本人が強く希望していることなので、希望通りアプリ開発の部署に配属。世の中器用な人もいるものです。

 彼はアプリ開発の部署でも、ガンガンという感じではないですが、博士号や修士号をもった先輩を尻目に、着実に成果を生み出していきました。彼は数年後会社を辞めました。営業もできてアプリ開発もできるなら、自分でアプリ開発して売ればいいだけです。そんな彼に、この間たまたま会う機会がありました。

3. 営業を確率で考えるということ

 どうやって営業成績をあげたのか。疑問はその1点です。彼に聞いてみました。彼はこう言いました。「営業って確率論ですよね。 何をすれば何件アポイントメントが取れる。 何件提案すれば何件受注できる。それが見えてきたの、営業って数学的で面白いなと思いました」彼は工学部出身ですが、数学が大好きです。受注プロセスを確率的に考えて、それを実践したら、案件が確率通りに受注できたというのです。

 例えば、受注プロセスを以下のようだとします。

  • 「訪問」→「提案」→「受注」

 訪問して、提案して、受注する。何が確率論かというと、以下の3つの確率がこの受注プロセスにはあります。

  • 最初の「訪問できる確率」
  • 訪問後に「提案できる確率」
  • 提案後に「受注する確率」

 100件のプロスペクト(見込み案件)のリストがあったとして……

  • 最初の「訪問できる確率」 : 50%(0.5)
  • 訪問後に「提案できる確率」: 90%(0.9)
  • 提案後に「受注する確率 」: 60%(0.5)

 だとすると、最終的に受注できる確率は、27%(0.27=0.5×0.9×0.6)です。したがって、受注できる件数は、27件(27=0.27×100件)

 ちなみに、この企業では、イベント出展やセミナー開催、サイトの資料ダウンロードなどでプロスペクト(見込み案件)のリストを作成していました。彼はこの確率の存在をすぐ知りました。そして、その確率通りに受注できたことに、今まで学んだ数学が社会で活かせるという「喜び」を感じたそうです。

 1日10件から20件アポイントメントの電話をかけ、5件から10件の訪問の約束を漕ぎ着け、訪問したうち4件から9件提案することができ、最終的に3件から5件受注する。この繰り返しを彼はしていただけです。確率論で見ていたので、アポイントメントを断られようが、提案を拒否されようが、クロージングで失敗しようが、感情で的にそれほど引きずらなかったそうです。

4. 失注しても、確率で考えれば落ち込めない

 つまり、失注の連絡をもらったとき、必要以上に落ち込んでやる気を失うこともなければ、今度こそは燃えて空回りすることもない。10件訪問のアポイントメント取ろうとすれば半分は断られる、という感覚です。半分断られて当然なのだから、必要以上に落ち込む必要もなければ、そこで熱くなる必要もない。そんな感じです。彼は、営業活動が学んだ数学を体現していることに感動し、営業そのものがすごく楽しく、失注の連絡が来ても「よっしゃぁー」と思ったそうです。

 自分がはじき出した確率が証明されたからです。要するに、訪問のアポイントメントで断られようが、提案を拒否されようが、クロージングで失敗しようが、確率的に考えれば、落ち込んでいる暇はありません。10件提案すれば6件受注できるのですから、失注に心を痛めて動きが鈍れば、受注できるものも受注できなくなります。だから、落ち込んでいる暇ないのです。営業は失注しても、確率で考えれば落ち込めないのです。

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この記事の著者

高橋 威知郎

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)


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