中国工場の実状を知る、管理者について 中国工場の品質改善(その10)

更新日

投稿日

 

中国工場

【第2章 中国工場の実状を知る】

 前回のその9に続いて解説します。

 

【管理者】

 ここで言う管理者とは、呼び方は会社によって違いますが、現場の主管、科長、組長、班長のことです。今回は、主管、科長をみていきましょう。

(2)主管・科長

 作業者から班長を経て科長になる人もいますが、他社の管理職経験者や大学卒の新人を将来の候補として採用している企業が多いようです。

① 主管、科長の役割

 現場の主管や科長には、班長とはまた違った多くの重要な役割があります。現場の日常管理を任せることになる訳で、日々の生産が問題なく行われること、何か問題や異常が発生したときの対処など生産品の品質確保という重要な役目を持っています。

 生産品の品質確保という面では、継続的な改善を進める担い手としての役割もあります。生産や工程の問題点は、常に現場にいるスタッフ、現場のことをよく知っているスタッフが一番よくわかっているはずです。これらスタッフに改善を進める意識や力がないと改善は出来ません。現場の管理の他にも作業者や班長への教育係としての役割も担ってもらわなくてはなりません。人に教えるためには、まず本人が理解していることが必要です。

② 工場のレベルアップ

 現場の主管や科長にこれら役割を担ってもらうことが工場のレベルアップにつながりますし、そうした主管や科長の中から優秀な人がさらに上のポジションにつくことが現地化にもつながっていきます。新卒で入社した管理職候補がすぐに戦力になるのは難しいでしょう。ですが、戦力になるまで会社にいてもらわなくてはなりませんし、一人前の管理者になった後にこそ定着させる必要があります。筆者がいろいろな工場を見てきた経験では、管理者の定着率がよくない工場の管理レベルが高いことはありませんでした。

(3)管理者の定着のために必要なもの

 現場の組長や班長が、工場のQCDを支えるキーパーソンで、主管や科長は改善の担い手であると書きました。ということは、この人たちの定着が、工場にとって非常に重要であることを意味しています。では、管理者を定着させるのに必要なことは何でしょうか?給料でしょうか。残念ながら違います。お金はもちろん一つの重要な要素ですが、それ以外のところでは作業者とは少し違いがあります。管理者の定着に必要なことは、会社にいることが彼ら自身にとってプラスなると思わせることです。

 管理者たちは、自分の将来を考えて、次のことをしっかり見ています。

  • この会社にいて得られるものは何か
  • この会社にいることでどんなスキルを身に付けることが出来るか
  • この会社にこのままいた場合、いったいどこまで出世できるか 

 この会社にいても何も身に付かない、このまま会社にいてもこれ以上の出世も望めないと思った場合、会社に対する不満となり他の会社に行ってしまうことにつながります。ですから、管理者を育成するためにも、彼ら彼女...

 

中国工場

【第2章 中国工場の実状を知る】

 前回のその9に続いて解説します。

 

【管理者】

 ここで言う管理者とは、呼び方は会社によって違いますが、現場の主管、科長、組長、班長のことです。今回は、主管、科長をみていきましょう。

(2)主管・科長

 作業者から班長を経て科長になる人もいますが、他社の管理職経験者や大学卒の新人を将来の候補として採用している企業が多いようです。

① 主管、科長の役割

 現場の主管や科長には、班長とはまた違った多くの重要な役割があります。現場の日常管理を任せることになる訳で、日々の生産が問題なく行われること、何か問題や異常が発生したときの対処など生産品の品質確保という重要な役目を持っています。

 生産品の品質確保という面では、継続的な改善を進める担い手としての役割もあります。生産や工程の問題点は、常に現場にいるスタッフ、現場のことをよく知っているスタッフが一番よくわかっているはずです。これらスタッフに改善を進める意識や力がないと改善は出来ません。現場の管理の他にも作業者や班長への教育係としての役割も担ってもらわなくてはなりません。人に教えるためには、まず本人が理解していることが必要です。

② 工場のレベルアップ

 現場の主管や科長にこれら役割を担ってもらうことが工場のレベルアップにつながりますし、そうした主管や科長の中から優秀な人がさらに上のポジションにつくことが現地化にもつながっていきます。新卒で入社した管理職候補がすぐに戦力になるのは難しいでしょう。ですが、戦力になるまで会社にいてもらわなくてはなりませんし、一人前の管理者になった後にこそ定着させる必要があります。筆者がいろいろな工場を見てきた経験では、管理者の定着率がよくない工場の管理レベルが高いことはありませんでした。

(3)管理者の定着のために必要なもの

 現場の組長や班長が、工場のQCDを支えるキーパーソンで、主管や科長は改善の担い手であると書きました。ということは、この人たちの定着が、工場にとって非常に重要であることを意味しています。では、管理者を定着させるのに必要なことは何でしょうか?給料でしょうか。残念ながら違います。お金はもちろん一つの重要な要素ですが、それ以外のところでは作業者とは少し違いがあります。管理者の定着に必要なことは、会社にいることが彼ら自身にとってプラスなると思わせることです。

 管理者たちは、自分の将来を考えて、次のことをしっかり見ています。

  • この会社にいて得られるものは何か
  • この会社にいることでどんなスキルを身に付けることが出来るか
  • この会社にこのままいた場合、いったいどこまで出世できるか 

 この会社にいても何も身に付かない、このまま会社にいてもこれ以上の出世も望めないと思った場合、会社に対する不満となり他の会社に行ってしまうことにつながります。ですから、管理者を育成するためにも、彼ら彼女らの要求に応えるためにも、どんなスキルを身に付けることができるのかを示すことです。そして彼らにスキルを身に付けさせる仕組みを作っておくことが必要です。また、優秀であれば幹部として登用される可能性があることを実際に示して見せることが大事です。

 管理者の定着は、工場管理や品質確保のために作業者以上に重要なポイントです。育成の仕組みついては、この連載、第3章内の「中国工場での従業員教育の進め方」で詳しく解説します。

 次回は、経営層について解説します。

【出典】根本隆吉 著 「中国工場の品質改善」 日刊工業新聞社発行   筆者のご承諾により、抜粋を連載

   続きを読むには・・・


この記事の著者

根本 隆吉

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改善・再構築を第一の使命と考え皆様を支援します。

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改...


「人的資源マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
エンゲージメントとは~技術企業の高収益化:実践的な技術戦略の立て方(その9)

  ◆ 社員のエンゲージメント向上に必要な事とは  世相は世相ですが、私のクライアント企業の方は実に楽しそうに仕事をしている人が多いです...

  ◆ 社員のエンゲージメント向上に必要な事とは  世相は世相ですが、私のクライアント企業の方は実に楽しそうに仕事をしている人が多いです...


技術士第二次試験対策:「絶対に合格する!」という強い気持ちを持つ

1. 技術士試験の合格に必要なこと  「わかりやすい答案の書き方(技術士第二次試験対策を例に)」というテーマの記事の中で以下のことを書きました。 ...

1. 技術士試験の合格に必要なこと  「わかりやすい答案の書き方(技術士第二次試験対策を例に)」というテーマの記事の中で以下のことを書きました。 ...


レジリエンスを高める技術(その1)

【レジリエンスとは 連載へのリンク】 1、6つのレジリエンス・コアコンピテンシー ← 今回の解説記事 2、自己認識(Self-awarene...

【レジリエンスとは 連載へのリンク】 1、6つのレジリエンス・コアコンピテンシー ← 今回の解説記事 2、自己認識(Self-awarene...


「人的資源マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
多能工育成の手順

 多能工の育成手順について考察してみます。  「多能工化、進めないといけないのはわかっちゃいるけど、なかなかうまく進まないな」という企業は大変多いと思い...

 多能工の育成手順について考察してみます。  「多能工化、進めないといけないのはわかっちゃいるけど、なかなかうまく進まないな」という企業は大変多いと思い...


自発的なコスト改善意識が必要な理由

 一般的に企業の最大の目的は営利です。利益から従業員の給与を含めた会社の維持費、株主への配当が割り当てられます。また利益余剰は内部留保として基本的にはさら...

 一般的に企業の最大の目的は営利です。利益から従業員の給与を含めた会社の維持費、株主への配当が割り当てられます。また利益余剰は内部留保として基本的にはさら...


人的資源マネジメント:効率的で実践的な進捗管理とは(その4)

 前回は、必要最小限の手間で効率的なメトリクス管理を実現するための3つの技法のうち、2軸管理と基本メトリクスセットについて、進捗管理を中心に事例を紹介しま...

 前回は、必要最小限の手間で効率的なメトリクス管理を実現するための3つの技法のうち、2軸管理と基本メトリクスセットについて、進捗管理を中心に事例を紹介しま...