良い目標とは

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 皆さんは、『良い目標と悪い目標の違い』をご存知ですか。一般的には「SMART」で設定せよと聞いたことがあるのではないでしょうか。初めて耳にした方も、すでにご存知の方も、この機会に復習してみてください。SMARTとは、次の頭文字を示し、それぞれ、具体的か、計測可能か、達成可能か、意味があるか、納期・スケジュールをチェックします。
 
S:Specific
M:Measurable
A:Achievable
R:Reasonable/Relevant
T:Time-bound
 
 良い目標は、これらの項目全てに答えられることが条件の一つになります。反対に悪い目標は、これらの項目のうち、一つでも答えられない目標を指します。果たして、今ある目標は「良い目標」になっているのでしょうか?
 
 今回は、これらの条件について事例を交えながら、解説します。
 
 目標管理
 

1. 良い目標の要件:Specificとは

 
 良い目標の要件:SMARTの最初のS:Specificについて事例とともに解説します。Specificには明確な、具体的な、特定のといった意味があります。
 
 「目標を明確にする」当たり前過ぎますが、実はすごく難しいことです。こんな事例で考えて見ましょう。
 
 目標を明確にしない(正確には明確にできていない)まま開発を進めたことで後戻りが発生し、スケジュールが大幅に遅れてしまった事例です。このような事態は、一見分かったように思える目標が該当しがちです。なぜなら、全く分からない目標であれば、分からないと指摘する人が出てくるからです。
 
 それゆえ、身内だけが理解できる、もっと言うと、自分だけが理解しているそんな目標になっていないかチェックすることの重要性です。目標は、いつまでに、誰が、何を、どのようにするかを明確にする必要があります。そして特に注意するべきチェック項目は、次の2つです。
 
 ◆単語、専門用語の意味を伝えているか(曖昧な表現は避ける)
 ◆数値:品質、コスト、スケジュールで表現しているか
 
 せっかく時間を費やして目標を立てるのですから、プロジェクトに関わる『ステークホルダー全員が同じ理解を示す目標』になるまでブラッシュアップしましょう。
 

2. 良い目標の要件:Measurableとは

 
 Measurableは「測定可能な」という意味があります。身近なものでは、数字を使って判断することが一般的です。あらゆる実験、試作に目標値は当然必要ですから技術者のみなさまは、違和感なく感じられるのではないでしょうか。注意していただきたいことは、新規事業に関わる目標値です。それは予想がつかない未知なる活動だからです。
 
 みなさまは、目標値をどうやって決めているのか、思い出してみてください。いかがでしょうか。一番やってはいけないのは、数値を決めないこと≒ 後から決めるという考え方です。数値を決めずになんとなくやってみる、これは非常に危険です。なぜかというと、何のために、どんなレベルに達するまで行動しなければいけないのかが分からない目標は、よっぽど楽しくて仕方ない活動でもない限り、メンバーのやる気は起こらないですし、結果も出ないからです。
 
 故に、たとえ予想がつかない未知なる活動でも測定可能な目標値は必要です。ぜひ測定可能な目標値を作る努力を惜しまないで挑戦してください。
 

3. 良い目標の要件:Achievableとは

 
  Achievableは「達成可能な」という意味があります。実はこれは少々厄介な指標です。単純に達成可能な目標を立てることは、どなたでも出来るでしょう。でも新規事業や新商品を開発する上で立てる目標です。簡単に達成できる目標であるはずはなさそうです。ギリギリの目標を立てる時、どうすればよいのでしょうか?
 
 その答えは、全て順調に進められたら出来そうな目標を立てることです。この「出来そうな」を判断するスキルが大切です。あなたが経営者・リーダーであれば、このスキルを少しずつでもつけるよう努力しましょう。リーダーに成り立てなど不慣れな場合は、あなたが設定した目標をあなたより上の立場の人物やメンターなど第三者の意見を聞くこともよいでしょう。
 
 人は誰しも自分についての判断力が鈍ります。それは甘くも辛くもブレてしまうので、そんな時は誰かを頼ってアドバイスしてもらい最終的な判断は自分でする!こうすることで、達成可能なギリギリの良い目標が立てられます。
 

4. 良い目標の要件:Reasonable/Relevantとは

 
 実はSMARTのRは、次のように複数の解釈がされています。例えば、Relevant/Related:関連のある、Realistic:現実的な、などです。
 

◆Relevant/Related:関連のある

 
 経営目標や開発目標に関連したものか、つまり、より上位の目標や価値観にもとづく目標なのか。
 

◆Realistic:現実的な

 
 現実的に達成可能な目標なのか。
 
 ご紹介した意味以外にresult-orientedなど別の解釈もありますが、ここでは「Relevant/Related:関連のある」と定義し、ご紹介します。
 
 なぜ、上位の目標や価値観にもとづく目標であるべきなのでしょうか?商品開発をする組織の目標、個人の目標は、すべて上位の経営目標、開発目標に関連している必要があります。開発前に決める原価目標はその一例です。
 
 この原価目標を達成するために、組織→チーム→個人と開発目標が決まります。このようにトップの目標に関連した、一本の軸となっている目標には、あなた自身、メンバーのやる気を生み出す力を持っています。ぜひ、「Relevant/Related:関連のある」目標設定をしてみてください。
 
 目標管理
 

5. 良い目標の要件:Time-boundとは

 
 良い目標の要件:SMARTのラストを飾るTについてです。Tは、Time-bound:期限を定めたです。
 
 上記までで
 
 Specific:明確な
 Measurable:測定可能な
 Achievable:達成可能な
 Relevant/Related:関連のある
 
 といったポイントをお伝えしましたが、これらは全て期限付きで設定します。簡単に達成できる目標であれば、すぐに期限も設定できるでしょう。しかし、未来が予測しづらい目標であればあるほど、期限も決めにくいはずです。開発中によくある発言ですが、「納期は出来高で!」これは、本人都合の目標です。
 
 開発はあくまで会社全体、チームで行われるものです。どんなにいい商品でも市場のタイミングと合わなければ売れません。常に最終製品のリリース時期を考慮して期限を決めましょう。
 
 ちなみに開発段階で期限を設けるメリットとして、たとえ目標が達成できていなくてもアドバイスし合ったり、軌道修正することができることです。組織力、チーム力を向上する上でも目標には必ず期限を設けて、チェックする習慣を付けましょう。
 

6. 社内の誰もが理解できる目標とは

 
 あなた、あなたの会社は、一生懸命 頑張っているのに、なぜ商品開発が遅れてしまうのかをご存知でしょうか?答えはシンプル。...
 皆さんは、『良い目標と悪い目標の違い』をご存知ですか。一般的には「SMART」で設定せよと聞いたことがあるのではないでしょうか。初めて耳にした方も、すでにご存知の方も、この機会に復習してみてください。SMARTとは、次の頭文字を示し、それぞれ、具体的か、計測可能か、達成可能か、意味があるか、納期・スケジュールをチェックします。
 
S:Specific
M:Measurable
A:Achievable
R:Reasonable/Relevant
T:Time-bound
 
 良い目標は、これらの項目全てに答えられることが条件の一つになります。反対に悪い目標は、これらの項目のうち、一つでも答えられない目標を指します。果たして、今ある目標は「良い目標」になっているのでしょうか?
 
 今回は、これらの条件について事例を交えながら、解説します。
 
 目標管理
 

1. 良い目標の要件:Specificとは

 
 良い目標の要件:SMARTの最初のS:Specificについて事例とともに解説します。Specificには明確な、具体的な、特定のといった意味があります。
 
 「目標を明確にする」当たり前過ぎますが、実はすごく難しいことです。こんな事例で考えて見ましょう。
 
 目標を明確にしない(正確には明確にできていない)まま開発を進めたことで後戻りが発生し、スケジュールが大幅に遅れてしまった事例です。このような事態は、一見分かったように思える目標が該当しがちです。なぜなら、全く分からない目標であれば、分からないと指摘する人が出てくるからです。
 
 それゆえ、身内だけが理解できる、もっと言うと、自分だけが理解しているそんな目標になっていないかチェックすることの重要性です。目標は、いつまでに、誰が、何を、どのようにするかを明確にする必要があります。そして特に注意するべきチェック項目は、次の2つです。
 
 ◆単語、専門用語の意味を伝えているか(曖昧な表現は避ける)
 ◆数値:品質、コスト、スケジュールで表現しているか
 
 せっかく時間を費やして目標を立てるのですから、プロジェクトに関わる『ステークホルダー全員が同じ理解を示す目標』になるまでブラッシュアップしましょう。
 

2. 良い目標の要件:Measurableとは

 
 Measurableは「測定可能な」という意味があります。身近なものでは、数字を使って判断することが一般的です。あらゆる実験、試作に目標値は当然必要ですから技術者のみなさまは、違和感なく感じられるのではないでしょうか。注意していただきたいことは、新規事業に関わる目標値です。それは予想がつかない未知なる活動だからです。
 
 みなさまは、目標値をどうやって決めているのか、思い出してみてください。いかがでしょうか。一番やってはいけないのは、数値を決めないこと≒ 後から決めるという考え方です。数値を決めずになんとなくやってみる、これは非常に危険です。なぜかというと、何のために、どんなレベルに達するまで行動しなければいけないのかが分からない目標は、よっぽど楽しくて仕方ない活動でもない限り、メンバーのやる気は起こらないですし、結果も出ないからです。
 
 故に、たとえ予想がつかない未知なる活動でも測定可能な目標値は必要です。ぜひ測定可能な目標値を作る努力を惜しまないで挑戦してください。
 

3. 良い目標の要件:Achievableとは

 
  Achievableは「達成可能な」という意味があります。実はこれは少々厄介な指標です。単純に達成可能な目標を立てることは、どなたでも出来るでしょう。でも新規事業や新商品を開発する上で立てる目標です。簡単に達成できる目標であるはずはなさそうです。ギリギリの目標を立てる時、どうすればよいのでしょうか?
 
 その答えは、全て順調に進められたら出来そうな目標を立てることです。この「出来そうな」を判断するスキルが大切です。あなたが経営者・リーダーであれば、このスキルを少しずつでもつけるよう努力しましょう。リーダーに成り立てなど不慣れな場合は、あなたが設定した目標をあなたより上の立場の人物やメンターなど第三者の意見を聞くこともよいでしょう。
 
 人は誰しも自分についての判断力が鈍ります。それは甘くも辛くもブレてしまうので、そんな時は誰かを頼ってアドバイスしてもらい最終的な判断は自分でする!こうすることで、達成可能なギリギリの良い目標が立てられます。
 

4. 良い目標の要件:Reasonable/Relevantとは

 
 実はSMARTのRは、次のように複数の解釈がされています。例えば、Relevant/Related:関連のある、Realistic:現実的な、などです。
 

◆Relevant/Related:関連のある

 
 経営目標や開発目標に関連したものか、つまり、より上位の目標や価値観にもとづく目標なのか。
 

◆Realistic:現実的な

 
 現実的に達成可能な目標なのか。
 
 ご紹介した意味以外にresult-orientedなど別の解釈もありますが、ここでは「Relevant/Related:関連のある」と定義し、ご紹介します。
 
 なぜ、上位の目標や価値観にもとづく目標であるべきなのでしょうか?商品開発をする組織の目標、個人の目標は、すべて上位の経営目標、開発目標に関連している必要があります。開発前に決める原価目標はその一例です。
 
 この原価目標を達成するために、組織→チーム→個人と開発目標が決まります。このようにトップの目標に関連した、一本の軸となっている目標には、あなた自身、メンバーのやる気を生み出す力を持っています。ぜひ、「Relevant/Related:関連のある」目標設定をしてみてください。
 
 目標管理
 

5. 良い目標の要件:Time-boundとは

 
 良い目標の要件:SMARTのラストを飾るTについてです。Tは、Time-bound:期限を定めたです。
 
 上記までで
 
 Specific:明確な
 Measurable:測定可能な
 Achievable:達成可能な
 Relevant/Related:関連のある
 
 といったポイントをお伝えしましたが、これらは全て期限付きで設定します。簡単に達成できる目標であれば、すぐに期限も設定できるでしょう。しかし、未来が予測しづらい目標であればあるほど、期限も決めにくいはずです。開発中によくある発言ですが、「納期は出来高で!」これは、本人都合の目標です。
 
 開発はあくまで会社全体、チームで行われるものです。どんなにいい商品でも市場のタイミングと合わなければ売れません。常に最終製品のリリース時期を考慮して期限を決めましょう。
 
 ちなみに開発段階で期限を設けるメリットとして、たとえ目標が達成できていなくてもアドバイスし合ったり、軌道修正することができることです。組織力、チーム力を向上する上でも目標には必ず期限を設けて、チェックする習慣を付けましょう。
 

6. 社内の誰もが理解できる目標とは

 
 あなた、あなたの会社は、一生懸命 頑張っているのに、なぜ商品開発が遅れてしまうのかをご存知でしょうか?答えはシンプル。目標が明確ではないからです。「いやいや、目標ならありますよ」とおっしゃる方が多いと思います。
 
 ここで重要なポイントは「社内の誰もが理解できる目標」となっているかです。ここが押さえられていないと誰もが自分にとって都合のいい目標に変えてしまうのです。何もイジワルでわざと変えているのではありません。あいまいな表現によって受け手が理解する目標の内容、到達レベルが異なるのです。
 
 このズレが積み重なることで、いつのまにか目標大きくズレて商品開発の遅れを誘発するのです。
 
 私も過去にこんな苦い経験があります。「ある研究開発部門が開発完了報告を行い、商品設計を開始したところ、実際は設計がスタートできるレベルに到っていない為、開発まで戻ってやり直しすることになりました。これは開発完了報告の場で特定の組織の人にだけ理解できる目標値になっていた為、出席したメンバーが指摘できない状態であったことが原因の一つでした。」このような例は、特に技術開発において、起こりやすい問題となっています。
 
 あなたの会社でも特定の役職、職種、組織の人だけに伝わる単語や数字になっていないかチェックしてみてください。
   

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この記事の著者

川崎 響子

革新的なテクノロジー事業を最速&確実に量産まで立ち上げます。 世界No.1商品を創る企業を世の中に送り出し続けることが私の使命です。

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