なぜなぜ分析:うまくいかない本当の理由

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 『なぜなぜを五回繰り返して、根本原因を追究せよ』と言われてもどうも、うまくいかない。5回繰り返せば本当に根本原因にたどり着くだろうか。そもそも「真の原因」「根本原因」とはなんだろうか。こんな疑問が次々と沸いてきます。そして、どの解説書を読んでも、分かったような分からないような、そんなモヤモヤがいつまでたっても晴れません。
 
 「トヨタ式なぜなぜ5回」は、大野耐一氏の著書「トヨタ生産方式」の中で解説されています。しかしそれは、自動車の量産が始まった初期の工場で現場指導として行われたもので、そのまま現在の工場には当てはまりません。実際の現場で「なぜなぜ分析」を行うことは、まずありえません。そこで、今回はそのもやもやを晴らすために「なぜなぜ分析」を徹底的に「分析」してみようと思います。
 

1. なぜなぜ分析の目的

 
 そもそも不良解析を行う目的は何でしょうか、それは、大きく2種類に分かれると思っています。
 
(1) 不良発生のメカニズムを解明する(因果関係)
(2) 不良を防止できなかった仕組み・ルール上の原因を解明する
 
 前者は固有技術、自然科学の法則、後者は人間が作り上げた「仕組み」です。詳しいなぜなぜ分析手順は。不良原因解析と再発防止2段階なぜなぜ分析法を参考にしてください。
 

【因果関係を解明する】

 
 因果関係を解明する時は、宇宙はなぜ存在するか?リンゴはなぜ木から落ちるのか?などから始まって、なぜ風邪を引いたのか?などの身近な現象まで様々存在するなぜを解明する時に使います。工場で、なぜ機械が止まったのか?と言う例で有名な「トヨタ生産方式」の著書の中で解説している大野耐一氏の「なぜなぜ分析」も実はこの部類に入ります。
 
 つまり、自然のメカニズムを解明することを主眼に置いて、あらゆる事象やデータを基に、真の原因を究明する方法です。リンゴが木から落ちたのは、地球の万有引力のため、風邪を引いたのは、ウイルスが鼻やのどから侵入したためです。
 
 また、機械が止まったのは、ろ過器が付いていない潤滑ポンプの軸が異物混入で摩耗したからと「なぜなぜ分析5回繰り返し説」を大野氏は説いています。科学的な根拠を究明し、風邪に効く薬を飲む、あるいはろ過器を付けるという対策に結び付けて行きます。
 
 但し、工場では機械が止まった物理的な原因は、その扱い方、保守点検などルール・手順上の問題がが必ず絡んできます。
 

【仕組み・ルール上の原因を解明する】

 
 仕組み・ルール上の原因とは、なぜ風邪を予防しなかったのか?なぜ機械が止まるまで何も対策しなかったのか?というように、管理上の欠陥のことです。管理の手順は、ISOの仕組みや、作業手順書、点検チェック使途などで決められていいます。また、習慣的に行われていること(暗黙のルール)や社内風土なども含まれるでしょう。では、仕組み・ルール上の原因を解明する「なぜなぜ分析」はなにを目的に行うのでしょうか?
 
 風邪を引いたのは、ウイルスが体内に入ったから、だから風邪薬を飲む、栄養を補給するという処置を取れば治ります。ただ、それだけではまた風邪を引いてしまうことがあります。そこで、風邪のシーズンに入る前に予防接種をする、手洗いをする、うがいをするなどの予防策を講じます。
 
 予防策を講じるために、ワクチンの準備、予防接種、啓蒙や教育などが行われ、二度と風邪を引かないように「しくみ化」します。この一連のプロセス(しくみ)に漏れが無いか?もし風邪を引くものが現れたらなぜ、なぜと、予防プロセスの欠陥を洗い出して、万全な予防プロセスを構築します。つまり、仕組みの悪さを暴いて、同様な問題が起きないようにするために行うのです。
 
 機械の故障も、なぜポンプにろ過器を付けなかったのかという、予防プロセスの漏れや欠陥を洗い出し、ポンプを購入するときの仕様の確認プロセス、ひいては、設備を新しく導入する時のチェック項目を洗い出し、漏れがあれば追加するなど、設備全体が二度と同じような事故が起きないように予防します。
 
 分析を行う時に、この区別をせずに混同している、また、しくみの悪さには一切触れず、因果関係だけを追求するなぜなぜだけを行っているため、再発防止の対策が打てず、うまくいかないのです。
 

2. プロセス上の原因を解明する「なぜなぜ分析」

 
 自然科学の法則を解明する「なぜなぜ分析」の到達点は明解です。それは、事実に基づく科学的な解明が可能だからです。因果関係がはっきりしているので、あらゆる科学的な技術を駆使して原因を究明して、その現象が起きないように対策することができます。ウイルスの種類に合った抗生物質を投与する、ポンプにろ過器を付けるなどで現象は収まります。(その道のプロの仕事)
 
 ところが、仕組み上の原因を究明して「根本原因」を見つけ、対策するには困難が伴います。風邪を二度とひかないようにする、設備の故障を起きないようにする、そのためにプロセスの欠陥や不備を見つけ、補強するやり方で予防しようとしますが、あらゆるケースを想定できない、最後は人間の注意力に頼らなければならないなど行き詰ってしまいます。ですから、仕組みの欠陥をどこまで追求するのか?何処までを想定した仕組みをあらかじめ構築するかを決めておかないと、なぜなぜ分析は永遠に終わりません。科学の発達レベル、国の制度、企業の人材力や財力などで、予防策も自ずと限度が出て来ます。
 

3. 品質対策と「なぜなぜ分析」の関係

 
 以上の事から、品質管理プロセス上の「なぜなぜ分析」は、自社の品質管理システムに照らして、どこまで「なぜなぜ」を続け、「根本原因」に到達させるかがポイントとなります。逆に、経営者は、自社の品質管理システムの達成すべき目標を明確にしておく必要があります。つまり経営資源の配分としての人材、設備、およびプロセスとして方法(しくみ、測定)を人出でやるか、あるいは高価な自動設備を購入するかなどどこに目標を置くのかで対策も決まります。(管理層の仕事)
 
 「人材が不足している」を「根本原因」として結論付けても、無いものねだりになってしまい、対策が進まなくなってしまうかも知れないからです。
 
 一般的な企業の品質問題発生、流出の「根本原因」と対策項目としては以下のようなものとなります。
 
 人・・・教育・訓練制度、採用制度
 設備・・・発注手順、導入検証手順、保全点検手順
 材料・・・材料採用認定手順、外注選定・管理手順、保管手順
 作業・・・作業方法・手順、ポカよけ、自働化、検査手順、工程FMEA
 測定・・・計測器導入と管理、データー監視と分析、4M変動管理
 
 自社の顧客、製品種類そして現状の品質システム(しくみ)に照らし、それぞれの項目の達成レベル設定し、それ...
 
 『なぜなぜを五回繰り返して、根本原因を追究せよ』と言われてもどうも、うまくいかない。5回繰り返せば本当に根本原因にたどり着くだろうか。そもそも「真の原因」「根本原因」とはなんだろうか。こんな疑問が次々と沸いてきます。そして、どの解説書を読んでも、分かったような分からないような、そんなモヤモヤがいつまでたっても晴れません。
 
 「トヨタ式なぜなぜ5回」は、大野耐一氏の著書「トヨタ生産方式」の中で解説されています。しかしそれは、自動車の量産が始まった初期の工場で現場指導として行われたもので、そのまま現在の工場には当てはまりません。実際の現場で「なぜなぜ分析」を行うことは、まずありえません。そこで、今回はそのもやもやを晴らすために「なぜなぜ分析」を徹底的に「分析」してみようと思います。
 

1. なぜなぜ分析の目的

 
 そもそも不良解析を行う目的は何でしょうか、それは、大きく2種類に分かれると思っています。
 
(1) 不良発生のメカニズムを解明する(因果関係)
(2) 不良を防止できなかった仕組み・ルール上の原因を解明する
 
 前者は固有技術、自然科学の法則、後者は人間が作り上げた「仕組み」です。詳しいなぜなぜ分析手順は。不良原因解析と再発防止2段階なぜなぜ分析法を参考にしてください。
 

【因果関係を解明する】

 
 因果関係を解明する時は、宇宙はなぜ存在するか?リンゴはなぜ木から落ちるのか?などから始まって、なぜ風邪を引いたのか?などの身近な現象まで様々存在するなぜを解明する時に使います。工場で、なぜ機械が止まったのか?と言う例で有名な「トヨタ生産方式」の著書の中で解説している大野耐一氏の「なぜなぜ分析」も実はこの部類に入ります。
 
 つまり、自然のメカニズムを解明することを主眼に置いて、あらゆる事象やデータを基に、真の原因を究明する方法です。リンゴが木から落ちたのは、地球の万有引力のため、風邪を引いたのは、ウイルスが鼻やのどから侵入したためです。
 
 また、機械が止まったのは、ろ過器が付いていない潤滑ポンプの軸が異物混入で摩耗したからと「なぜなぜ分析5回繰り返し説」を大野氏は説いています。科学的な根拠を究明し、風邪に効く薬を飲む、あるいはろ過器を付けるという対策に結び付けて行きます。
 
 但し、工場では機械が止まった物理的な原因は、その扱い方、保守点検などルール・手順上の問題がが必ず絡んできます。
 

【仕組み・ルール上の原因を解明する】

 
 仕組み・ルール上の原因とは、なぜ風邪を予防しなかったのか?なぜ機械が止まるまで何も対策しなかったのか?というように、管理上の欠陥のことです。管理の手順は、ISOの仕組みや、作業手順書、点検チェック使途などで決められていいます。また、習慣的に行われていること(暗黙のルール)や社内風土なども含まれるでしょう。では、仕組み・ルール上の原因を解明する「なぜなぜ分析」はなにを目的に行うのでしょうか?
 
 風邪を引いたのは、ウイルスが体内に入ったから、だから風邪薬を飲む、栄養を補給するという処置を取れば治ります。ただ、それだけではまた風邪を引いてしまうことがあります。そこで、風邪のシーズンに入る前に予防接種をする、手洗いをする、うがいをするなどの予防策を講じます。
 
 予防策を講じるために、ワクチンの準備、予防接種、啓蒙や教育などが行われ、二度と風邪を引かないように「しくみ化」します。この一連のプロセス(しくみ)に漏れが無いか?もし風邪を引くものが現れたらなぜ、なぜと、予防プロセスの欠陥を洗い出して、万全な予防プロセスを構築します。つまり、仕組みの悪さを暴いて、同様な問題が起きないようにするために行うのです。
 
 機械の故障も、なぜポンプにろ過器を付けなかったのかという、予防プロセスの漏れや欠陥を洗い出し、ポンプを購入するときの仕様の確認プロセス、ひいては、設備を新しく導入する時のチェック項目を洗い出し、漏れがあれば追加するなど、設備全体が二度と同じような事故が起きないように予防します。
 
 分析を行う時に、この区別をせずに混同している、また、しくみの悪さには一切触れず、因果関係だけを追求するなぜなぜだけを行っているため、再発防止の対策が打てず、うまくいかないのです。
 

2. プロセス上の原因を解明する「なぜなぜ分析」

 
 自然科学の法則を解明する「なぜなぜ分析」の到達点は明解です。それは、事実に基づく科学的な解明が可能だからです。因果関係がはっきりしているので、あらゆる科学的な技術を駆使して原因を究明して、その現象が起きないように対策することができます。ウイルスの種類に合った抗生物質を投与する、ポンプにろ過器を付けるなどで現象は収まります。(その道のプロの仕事)
 
 ところが、仕組み上の原因を究明して「根本原因」を見つけ、対策するには困難が伴います。風邪を二度とひかないようにする、設備の故障を起きないようにする、そのためにプロセスの欠陥や不備を見つけ、補強するやり方で予防しようとしますが、あらゆるケースを想定できない、最後は人間の注意力に頼らなければならないなど行き詰ってしまいます。ですから、仕組みの欠陥をどこまで追求するのか?何処までを想定した仕組みをあらかじめ構築するかを決めておかないと、なぜなぜ分析は永遠に終わりません。科学の発達レベル、国の制度、企業の人材力や財力などで、予防策も自ずと限度が出て来ます。
 

3. 品質対策と「なぜなぜ分析」の関係

 
 以上の事から、品質管理プロセス上の「なぜなぜ分析」は、自社の品質管理システムに照らして、どこまで「なぜなぜ」を続け、「根本原因」に到達させるかがポイントとなります。逆に、経営者は、自社の品質管理システムの達成すべき目標を明確にしておく必要があります。つまり経営資源の配分としての人材、設備、およびプロセスとして方法(しくみ、測定)を人出でやるか、あるいは高価な自動設備を購入するかなどどこに目標を置くのかで対策も決まります。(管理層の仕事)
 
 「人材が不足している」を「根本原因」として結論付けても、無いものねだりになってしまい、対策が進まなくなってしまうかも知れないからです。
 
 一般的な企業の品質問題発生、流出の「根本原因」と対策項目としては以下のようなものとなります。
 
 人・・・教育・訓練制度、採用制度
 設備・・・発注手順、導入検証手順、保全点検手順
 材料・・・材料採用認定手順、外注選定・管理手順、保管手順
 作業・・・作業方法・手順、ポカよけ、自働化、検査手順、工程FMEA
 測定・・・計測器導入と管理、データー監視と分析、4M変動管理
 
 自社の顧客、製品種類そして現状の品質システム(しくみ)に照らし、それぞれの項目の達成レベル設定し、それを目指した品質改善活動が求められるのです。
 
 最後に、ポイントを整理します。原因追究は2段階で行います。まず、「物理的原因(因果関係)」の究明、不具合が発生した固有のメカニズムを論理的に究明します。(その分野の技術のプロの仕事)この作業はトラブルシューティングであり、3現主義で行います。なぜなぜと追究しますが、これはメカニズムの解明のために行います。
 
 次に、「管理システム(仕組み)上の原因」の究明、なぜその固有の不良を予防できなかったのか?を究明します。(管理者の仕事)この作業は、なぜなぜ分析で管理上の悪さ(仕組みの欠陥)を暴きます。そして、次のようななぜなぜを進めて行きます。
 
 ① 仕組み、ルールはどのように規定しているか?
 ② なぜ守らなかったのか?
 ③ 守ったにも関わらず不具合がなぜ発生したのか?
 ④ しくみのどの部分が不備なのか?
 

【なぜなぜ分析がうまくいかない理由】

 
 ● 原因究明は2段階に分かれることを認識していない
 ● 管理の仕組み・ルールの存在を念頭になぜなぜの分析を行っていない
 ● なぜなぜの幅、深さの枠組みを決めずに行っている
 
 なぜなぜは、自由発想で闇雲に行うのではなく、一定のルールのもとに行う必要があります。
 
  

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この記事の著者

濱田 金男

製造業に従事して50年、新製品開発設計から製造技術、品質管理、海外生産まで、あらゆる業務に従事した経験を基に、現場目線で業務改革・経営改革・意識改革支援に取り組んでいます。

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