製造業のヒューマンエラーの考察

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 製造業のヒューマンエラーをゼロにするアプローチについて、その概要を解説します。ヒューマンエラーを防止するには、工程設計段階で予防対策を講じておく事が重要であり、その時、人は本来エラーするものという前提に立ち、それをカバーするシステムを設計して運用していく必要があります。それには、次のアプローチが基本といわれています。
 

(1) 事実に基づく分析と標準化

 
  ○ :正味(付加価値がある仕事)、→:移動、▽:手待ち、□:検査 の記号を使って行う。
 
 この手法は IE(Industr ial En gineering)という作業分析・ 改善手法として有名な手法であり、この手法を用いて分析すると、作業改善面と同時に、作業上多くのヒヤットが発見される。ブレーン・ストーミング方式でなく現場、現実の観察が重要と言うことが理解できます。
 
ヒューマンエラー
 

(2) ヒューマンエラー予防処置評価シート

 
 起こり得るヒューマンエラーを、各工程ごとに列挙し、発生防止策、流出防止策を講ずる。生産が始まる前に実施し、QC工程表に対策を盛り込む。起こりうるヒューマンエラーは、過去事例の蓄積データからピックアップする。
 
ヒューマンエラー未然防止、仕組み
 

(3) ヒヤリハット報告

 
 作業中ミスを起こしそうになった内容を記録し、関係者で原因究明と対策を講ずる。設計変更、工程変更などの初期品に対し実施し、結果をQC工程図へフィードバックする。
 
ヒューマンエラー未然防止、仕組み
 

(4) 人がミスしにくい工程の設計

 
 作業の対象となる物の形状・色、作業で使用する設備、作業指示票の様式、作業の手順などの作業方法 (作業を構成する人以外の要素)を工夫する。
 

 ①フールプルーフ

 
  作業を飛ばして先に進もうとするとアラームを鳴らすなど、先に進めない仕組みに設備機器を設計する(ポカヨケ)
 

 ②フェールセーフ

 
  設備等故障が生じたとき、操作手順を間違えた時、不良や事故に結びつくことなく安全側に作動して品質や安全が確保できるように設計する。そのためには、工程の5Mについて潜在する不具合を検出するために工程FMEAを実施する
 

(5) 人がミスしないように訓練する

 
 ①「知らないことはしない」「知らないことは聞く」の躾を徹底する
 ②「Know How」だけでなく「Know Why」教育で、なぜという原理を教える
 ③ 規則型マニュアルと教育型マニュアルを区別して作成する
 
「規則型」:手順どおりに従わなくてはならない強制的な手順書
   規則を説明し、遵守を説得する。そして納得し、遵守の態度で実行していることを確認する
 
「教育型」:初心者へのガイド、先人の知恵、失敗しないやり方などのノウハウをまとめたマニュアル
 

(6) 役割の明確化とコミュニケーション

 
 ●役割の明確化
  各部署の役割、職務権限、責任範囲の明確化業務分掌・職務分掌を作成し周知する。
 
 ●コミュニケーション手段
  朝礼:4,5人のグループごとに、前日の結果、今日の予定、注意事項、ヒヤリハット報告、
  不良発生時のミーティング:現場に関係者を集め、現場・現物を見ながら再発防止策
 
 ●情報ルートの明確化
  指示通達ルート、報告ルートの明確化を図る
  設計変更、納期変更等の情報ルート
  異常発生時の報告処理ルート
 

(7) 日常管理の改善サイクルの確立

 
 ヒューマンエラーを防止するためには、「日常...
 製造業のヒューマンエラーをゼロにするアプローチについて、その概要を解説します。ヒューマンエラーを防止するには、工程設計段階で予防対策を講じておく事が重要であり、その時、人は本来エラーするものという前提に立ち、それをカバーするシステムを設計して運用していく必要があります。それには、次のアプローチが基本といわれています。
 

(1) 事実に基づく分析と標準化

 
  ○ :正味(付加価値がある仕事)、→:移動、▽:手待ち、□:検査 の記号を使って行う。
 
 この手法は IE(Industr ial En gineering)という作業分析・ 改善手法として有名な手法であり、この手法を用いて分析すると、作業改善面と同時に、作業上多くのヒヤットが発見される。ブレーン・ストーミング方式でなく現場、現実の観察が重要と言うことが理解できます。
 
ヒューマンエラー
 

(2) ヒューマンエラー予防処置評価シート

 
 起こり得るヒューマンエラーを、各工程ごとに列挙し、発生防止策、流出防止策を講ずる。生産が始まる前に実施し、QC工程表に対策を盛り込む。起こりうるヒューマンエラーは、過去事例の蓄積データからピックアップする。
 
ヒューマンエラー未然防止、仕組み
 

(3) ヒヤリハット報告

 
 作業中ミスを起こしそうになった内容を記録し、関係者で原因究明と対策を講ずる。設計変更、工程変更などの初期品に対し実施し、結果をQC工程図へフィードバックする。
 
ヒューマンエラー未然防止、仕組み
 

(4) 人がミスしにくい工程の設計

 
 作業の対象となる物の形状・色、作業で使用する設備、作業指示票の様式、作業の手順などの作業方法 (作業を構成する人以外の要素)を工夫する。
 

 ①フールプルーフ

 
  作業を飛ばして先に進もうとするとアラームを鳴らすなど、先に進めない仕組みに設備機器を設計する(ポカヨケ)
 

 ②フェールセーフ

 
  設備等故障が生じたとき、操作手順を間違えた時、不良や事故に結びつくことなく安全側に作動して品質や安全が確保できるように設計する。そのためには、工程の5Mについて潜在する不具合を検出するために工程FMEAを実施する
 

(5) 人がミスしないように訓練する

 
 ①「知らないことはしない」「知らないことは聞く」の躾を徹底する
 ②「Know How」だけでなく「Know Why」教育で、なぜという原理を教える
 ③ 規則型マニュアルと教育型マニュアルを区別して作成する
 
「規則型」:手順どおりに従わなくてはならない強制的な手順書
   規則を説明し、遵守を説得する。そして納得し、遵守の態度で実行していることを確認する
 
「教育型」:初心者へのガイド、先人の知恵、失敗しないやり方などのノウハウをまとめたマニュアル
 

(6) 役割の明確化とコミュニケーション

 
 ●役割の明確化
  各部署の役割、職務権限、責任範囲の明確化業務分掌・職務分掌を作成し周知する。
 
 ●コミュニケーション手段
  朝礼:4,5人のグループごとに、前日の結果、今日の予定、注意事項、ヒヤリハット報告、
  不良発生時のミーティング:現場に関係者を集め、現場・現物を見ながら再発防止策
 
 ●情報ルートの明確化
  指示通達ルート、報告ルートの明確化を図る
  設計変更、納期変更等の情報ルート
  異常発生時の報告処理ルート
 

(7) 日常管理の改善サイクルの確立

 
 ヒューマンエラーを防止するためには、「日常管理の改善サイクル」が正しく回っていなければならないのです。問題を放置したり、正しい管理手法を知らなければ改善サイクルは正しく回りません。
 
 ①製造工程の管理項目を決める(工程設計)
 ②日常管理の仕組みを作る(現場の管理者)
 ③仕組を守る、守らせる(現場の管理者)
 ④目で見る管理(現場小集団、管理者)
 ⑤異常発見(現場小集団、管理者)
 ⑥問題を放置せず原因究明と対策(現場小集団、管理者)
 ⑦日常管理のしくみへフィードバックする(現場小集団、管理者)
  

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この記事の著者

濱田 金男

製造業に従事して50年、新製品開発設計から製造技術、品質管理、海外生産まで、あらゆる業務に従事した経験を基に、現場目線で業務改革・経営改革・意識改革支援に取り組んでいます。

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