自社の強みとは 『価値づくり』の研究開発マネジメント (その23)

更新日

投稿日

 
R&D
 前回は、オープンイノベーションを成功させるためのビジネスモデルの必要性を解説しました。今回は、自社の強みの設定について議論したいと思います。
 

1. 自社の強みは更に強化し、そうでないものは外部に求める

 
 ここまでに解説してきたように、オープンイノベーションの対象は技術だけではありません。市場の知識、製品企画・設計、製品そのもの、能力もオープンイノベーションの対象となります。それでは外部に求めるものは何なのか、それは、自社が本来自社で維持・強化すべきもの(すなわち強み)以外ものです。すべてを外部に求めるようであれば、必ず事業においては競争が存在しますので、自社が市場で勝ち、さらに高い利益率を実現することはできません。
 
 オープンイノベーションの時代においても、自社の強みは絶対に自社に温存しなければなりません。一方で、自社の強み以外は、外部に自社より優れた企業が沢山あるのですから、逆に外部を使わない手はありません。そのために、自社が守るべき強みはなんであるのかを突き詰め、決定しなければなりません。
 

2. 強み設定の軸:VRIOとは

 それでは、自社の強みとはどのようなものなのでしょうか。それについては、米国のオハイオ州立大学の教授であるジェイ・バーニーが提唱する、VRIOがあります。
 
 VRIOとはValue、Rearity、Imitability、Organizationの4つの単語の頭文字から構成されるものです。自社に欠かせない3つの強みと必要な組織力とは、次のようなことです。
 

(1) Value(経済価値)

 何を自社に残し、何を外部に求めるかを決定する拠り所としての自社の強みは、最終的に収益に結び付くものでなければなりません。企業が経営を継続的に行っていくためには様々な能力が必要ですが、それらがすべて収益に同じように貢献するわけではありません。自社の強みは、特に収益に大きく貢献できるものである必要があります。
 

(2) Rearity(希少性)

 
 仮にある能力が自社の強みと認識していても、同じように多くの他社がそのような強みを持っているのでは、自社の本当の強みとは言えません。むしろその場合、能力の最も高い企業に依存した方が良いかもしれません。
 

(3) Imitability(模倣の困難性)

 その強みが自社独自のものであっても、他社に簡単に模倣されるようなものであれば、それは今は強みかもしれませんが、今後事業を展開する中強みではなくなってしまう可能性は大きいのです。したがって、自社の強みには模倣困難性が求められます。
 

(4) Organization(組織)

 
 自社に上の3つを満たすような強みがあるにしても、組織の中にその強みを発揮し、最終的に収益という経済価値に転化...
 
R&D
 前回は、オープンイノベーションを成功させるためのビジネスモデルの必要性を解説しました。今回は、自社の強みの設定について議論したいと思います。
 

1. 自社の強みは更に強化し、そうでないものは外部に求める

 
 ここまでに解説してきたように、オープンイノベーションの対象は技術だけではありません。市場の知識、製品企画・設計、製品そのもの、能力もオープンイノベーションの対象となります。それでは外部に求めるものは何なのか、それは、自社が本来自社で維持・強化すべきもの(すなわち強み)以外ものです。すべてを外部に求めるようであれば、必ず事業においては競争が存在しますので、自社が市場で勝ち、さらに高い利益率を実現することはできません。
 
 オープンイノベーションの時代においても、自社の強みは絶対に自社に温存しなければなりません。一方で、自社の強み以外は、外部に自社より優れた企業が沢山あるのですから、逆に外部を使わない手はありません。そのために、自社が守るべき強みはなんであるのかを突き詰め、決定しなければなりません。
 

2. 強み設定の軸:VRIOとは

 それでは、自社の強みとはどのようなものなのでしょうか。それについては、米国のオハイオ州立大学の教授であるジェイ・バーニーが提唱する、VRIOがあります。
 
 VRIOとはValue、Rearity、Imitability、Organizationの4つの単語の頭文字から構成されるものです。自社に欠かせない3つの強みと必要な組織力とは、次のようなことです。
 

(1) Value(経済価値)

 何を自社に残し、何を外部に求めるかを決定する拠り所としての自社の強みは、最終的に収益に結び付くものでなければなりません。企業が経営を継続的に行っていくためには様々な能力が必要ですが、それらがすべて収益に同じように貢献するわけではありません。自社の強みは、特に収益に大きく貢献できるものである必要があります。
 

(2) Rearity(希少性)

 
 仮にある能力が自社の強みと認識していても、同じように多くの他社がそのような強みを持っているのでは、自社の本当の強みとは言えません。むしろその場合、能力の最も高い企業に依存した方が良いかもしれません。
 

(3) Imitability(模倣の困難性)

 その強みが自社独自のものであっても、他社に簡単に模倣されるようなものであれば、それは今は強みかもしれませんが、今後事業を展開する中強みではなくなってしまう可能性は大きいのです。したがって、自社の強みには模倣困難性が求められます。
 

(4) Organization(組織)

 
 自社に上の3つを満たすような強みがあるにしても、組織の中にその強みを発揮し、最終的に収益という経済価値に転化させる能力を保有していなければ、現実には強みとは言えません。つまり「宝の持ち腐れ」です。自社にはその強みを生かし、高収益を実現する組織力・経営力が備わっていることが求められます。
 

3. 強みの設定における未来志向の重要性

 
 自社の強みの設定において、極めて重要な点があります。それは、自社の強みとは未来永劫同じ強みに依拠するということではだめで、自社の強みは未来志向で設定することです。この点については、次回、引き続き解説をします。
 
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
自社の行く末を徹底して考えるとは 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その27)

 KETICモデルの中の知識(Knowledge)の内、ここまで3回にわたりコア技術について解説していましたが、肝心のコア技術とは何か?それをどう設定する...

 KETICモデルの中の知識(Knowledge)の内、ここまで3回にわたりコア技術について解説していましたが、肝心のコア技術とは何か?それをどう設定する...


強みは未来志向で設定 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その46)

        前々回からKETICモデルのK(Knowledge)の知識の3つの要素の内、「自社の強み」を...

        前々回からKETICモデルのK(Knowledge)の知識の3つの要素の内、「自社の強み」を...


設計品質作り込み:設計のしくみとは

 一般的にしくみとは、①組織 ②制度 ③プロセス ④コンピュータシステムなどを指します。しくみ化とは、処理をコンピューター化する意味だけではなく、決められ...

 一般的にしくみとは、①組織 ②制度 ③プロセス ④コンピュータシステムなどを指します。しくみ化とは、処理をコンピューター化する意味だけではなく、決められ...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
擦り合わせ型と組み合わせ型、目指すべき開発体制とは(その3)

【目指すべき開発体制 連載目次】 目指すべき開発体制とは(その1)擦り合わせ型と組み合わせ型 目指すべき開発体制とは(その2)日本企業文化を引きず...

【目指すべき開発体制 連載目次】 目指すべき開発体制とは(その1)擦り合わせ型と組み合わせ型 目指すべき開発体制とは(その2)日本企業文化を引きず...


サブシステムの開発目標 プロジェクト管理の仕組み (その42)

 前回のその41に続いて解説します。    下図は、改めて操作管理サブシステムだけを抽出したものです。   図78. 操作...

 前回のその41に続いて解説します。    下図は、改めて操作管理サブシステムだけを抽出したものです。   図78. 操作...


製品開発部へのカンバン導入記(その2)

        前回からの続きです。前回は製品開発部がカンバンを導入するに至った簡単な経緯と、最初の問題点(...

        前回からの続きです。前回は製品開発部がカンバンを導入するに至った簡単な経緯と、最初の問題点(...