設計品質の作り込みと、人的設計ミス防止策(その1)

更新日

投稿日

 

【設計品質の作り込みと人的設計ミス防止策 連載目次】

 

1.設計品質とはなにか

 
 設計ミスを無くし設計品質を向上させたいと考えている企業は多いと思います。しかし、どのようにすれば設計品質が向上するのか、技術者の教育か、あるいは仕組みの改善か、あるいは設計手法の導入なのか、色々と対策案はありますが、いったいどれが有効なのか判断に迷います。そこで、対策を講ずる前に、まず設計品質とは何かを整理してみましょう。
 

(1)新製品設計フローの概要

 
 設計ミスを起こさないためには、過去に実績がある図面を流用する、標準品を使用する、構造や動作シミュレーションを実施するなどして設計を進めます。(図1参照)試作評価では、市場で発生する問題はすべて洗い出すことは困難です。そこで、FTAやFMEA、またはリスクアセスメントなどの信頼性・安全性解析手法を用いて検証を行います。デザイン・レビューでは、過去に発生した問題がまた起きないかの検証、また製造部門、保守サービス部門も交え、製造上の問題点や、保守上の問題点を洗い出し、設計へフィードバックします。
 
  設計品質
                    図1.新製品の設計フロー
 
 流用度や、設計の規模によっても異なりますが、基本的にはステップごとにデザイン・レビューを実施して、次のステップへ進めるかどうかをジャッジします。
 

(2)商品の品質とは

 
 品質を商品開発の流れで見ると以下の4つに分類できます。
 
① 企画品質:商品企画段階で決める品質
 
 消費者が要求している品質を見極め、機能、性能などの品質特性に落とし込む。また適正な価格、販売時期など商品の企画段階で設定された要素を総合して企画品質という。
 
② 設計品質:企画された商品の構造や動作を作り込む作業の品質
 
 企画段階で決定された内容(企画書)に基づいて、作成される設計図面にアウトプットされる品質で、設計者が自社の保有する固有技術や自分のアイデア等を盛り込んで目標の機能、コスト等を達成させたものを設計品質と言う。
 
③ 製造品質:製造工程で作り込む品質
 
 設計時には、製造を考慮して作り易く、ミスが起きにくい構造的な考慮がなされた図面が作成される。また製造工程においては、設計図面指示通りのものを、間違いなく製造するための工程、作業手順が設計される。そして、設計通りのものが間違いなく製造されるよう作業管理が行われる。これらを総合したものを製造品質と言う。
 
④ 使用品質:実際にその商品を使用したときの品質
 
 様々な使用環境の中で、様々な使い方をした時に故障や事故が起きないこと、または故障しても安全な事が求められる。また実際に消費者が商品を使用した時に、使...

 

【設計品質の作り込みと人的設計ミス防止策 連載目次】

 

1.設計品質とはなにか

 
 設計ミスを無くし設計品質を向上させたいと考えている企業は多いと思います。しかし、どのようにすれば設計品質が向上するのか、技術者の教育か、あるいは仕組みの改善か、あるいは設計手法の導入なのか、色々と対策案はありますが、いったいどれが有効なのか判断に迷います。そこで、対策を講ずる前に、まず設計品質とは何かを整理してみましょう。
 

(1)新製品設計フローの概要

 
 設計ミスを起こさないためには、過去に実績がある図面を流用する、標準品を使用する、構造や動作シミュレーションを実施するなどして設計を進めます。(図1参照)試作評価では、市場で発生する問題はすべて洗い出すことは困難です。そこで、FTAやFMEA、またはリスクアセスメントなどの信頼性・安全性解析手法を用いて検証を行います。デザイン・レビューでは、過去に発生した問題がまた起きないかの検証、また製造部門、保守サービス部門も交え、製造上の問題点や、保守上の問題点を洗い出し、設計へフィードバックします。
 
  設計品質
                    図1.新製品の設計フロー
 
 流用度や、設計の規模によっても異なりますが、基本的にはステップごとにデザイン・レビューを実施して、次のステップへ進めるかどうかをジャッジします。
 

(2)商品の品質とは

 
 品質を商品開発の流れで見ると以下の4つに分類できます。
 
① 企画品質:商品企画段階で決める品質
 
 消費者が要求している品質を見極め、機能、性能などの品質特性に落とし込む。また適正な価格、販売時期など商品の企画段階で設定された要素を総合して企画品質という。
 
② 設計品質:企画された商品の構造や動作を作り込む作業の品質
 
 企画段階で決定された内容(企画書)に基づいて、作成される設計図面にアウトプットされる品質で、設計者が自社の保有する固有技術や自分のアイデア等を盛り込んで目標の機能、コスト等を達成させたものを設計品質と言う。
 
③ 製造品質:製造工程で作り込む品質
 
 設計時には、製造を考慮して作り易く、ミスが起きにくい構造的な考慮がなされた図面が作成される。また製造工程においては、設計図面指示通りのものを、間違いなく製造するための工程、作業手順が設計される。そして、設計通りのものが間違いなく製造されるよう作業管理が行われる。これらを総合したものを製造品質と言う。
 
④ 使用品質:実際にその商品を使用したときの品質
 
 様々な使用環境の中で、様々な使い方をした時に故障や事故が起きないこと、または故障しても安全な事が求められる。また実際に消費者が商品を使用した時に、使いやすいものでなければならない。これを総合して使用品質という。
 
 一言で設計品質と言っても、企画品質を向上させたいのか、設計工程そのものの品質を向上させたいのか、そして、市場に出てからの信頼性を向上させたいのか、それらよって、論点が違ってきます。特に④の使用品質は、近年においては特に重要な品質となっています。
 
 次回、その2では、設計プロセスと設計ミス回避策を解説します。
 
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

濱田 金男

製造業に従事して50年、新製品開発設計から製造技術、品質管理、海外生産まで、あらゆる業務に従事した経験を基に、現場目線で業務改革・経営改革・意識改革支援に取り組んでいます。

製造業に従事して50年、新製品開発設計から製造技術、品質管理、海外生産まで、あらゆる業務に従事した経験を基に、現場目線で業務改革・経営改革・意識改革支援に...


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
位置関係-5 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その108)

   現在、KETICモデルの中の「知識・経験を関係性で整理する」を解説しています。前回まで4度にわたり、KETICモデルの思考の中の「位...

   現在、KETICモデルの中の「知識・経験を関係性で整理する」を解説しています。前回まで4度にわたり、KETICモデルの思考の中の「位...


製品・技術開発力強化策【連載記事紹介】

  製品・技術開発力強化策の連載が無料でお読みいただけます!   ◆製品・技術開発力強化策 時代の流れに沿う開発テ-マとし...

  製品・技術開発力強化策の連載が無料でお読みいただけます!   ◆製品・技術開発力強化策 時代の流れに沿う開発テ-マとし...


イノベーションの創出 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その131)

  【この連載の前回へのリンク】 現在「切り取った知識の重要部分を発想するフレームワークを使って、イノベーションを発想する」にむけて、日...

  【この連載の前回へのリンク】 現在「切り取った知識の重要部分を発想するフレームワークを使って、イノベーションを発想する」にむけて、日...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
顧客価値の理解を深めるには

 私は、日ごろ、ものづくり企業のR&D現場をフィールドとしたコンサルティングに取り組んでいます。その中で、価値、とりわけ顧客価値は、R&D...

 私は、日ごろ、ものづくり企業のR&D現場をフィールドとしたコンサルティングに取り組んでいます。その中で、価値、とりわけ顧客価値は、R&D...


進捗の見える化:第2回 プロジェクト管理の仕組み (その11)

 進捗の見える化ですが、前回のその10に続いて解説します。今回考えるべきポイントは、可視化・見える化の方法です。図40 に示しているように、進捗管理では予...

 進捗の見える化ですが、前回のその10に続いて解説します。今回考えるべきポイントは、可視化・見える化の方法です。図40 に示しているように、進捗管理では予...


進捗管理の精度を上げる:第2回 プロジェクト管理の仕組み (その14)

 実際の進捗管理方法について、基本メトリクスセットの中の「作業成果物」から紹介します。作業成果物とは開発作業を進める中で出力されるもののことです。ハードウ...

 実際の進捗管理方法について、基本メトリクスセットの中の「作業成果物」から紹介します。作業成果物とは開発作業を進める中で出力されるもののことです。ハードウ...