ミルクラン再考 (その3)

 今回のテーマである「ミルクラン」を物流用語集で調べてみると、「自動車会社の調達物流」の一環として行われているという書き方をしているケースを見かけることがあります。
 
 ミルクランは何も自動車部品の物流に限って当てはまるものではないのですが、強力なリーダーシップを発揮してコストダウンや高度なサプライチェーンを構築するニーズが特に強いのが自動車業界だったのでしょう。他業種ではそこまでの要請がなかったからかどうか分かりませんが、ほとんど進んでいない影響からこう書かれているのでしょう。ミルクランをキーワードに調達物流を3回の連載で解説します。今回は、その3です。
 
SCM

1. 引き取り物流の二つの目標

 引き取り側は自らの予算でトラックを配車し、サプライチェーン全体のリードタイム短縮に寄与しながら輸送の効率化を図っていくことになったわけです。物流コストの削減と、ジャストインタイムの両立といった簡単ではない課題に直面することになります。担当スタッフは知恵を振り絞って仕事に取り組まなければなりません。会社としてはリードタイム短縮目標と、物流コスト削減目標を物流スタッフに課すことになりました。片方だけの達成では評価されません。あくまでもミルクラン方式による引き取り物流はこれらの両立が前提となった物流システムです。常に荷量の変動をにらみながらルートの変更や積み合せ荷物の変更を行っていきます。こうしたことを繰り返すうちに物流スタッフの実力は向上していきます。
 
 ミルクランは何もサプライヤーへの引き取りだけに限る必要はありません。自社の出荷貨物を混載しても一向に構わないのです。荷主は自社なわけですから好きなように物流をデザインすることができるのです。こうして今まで実現しなかった、自社貨物とサプライヤー貨物の混載、所謂「内外混載」が可能となりました。自社の重量貨物とサプライヤーの嵩の張る貨物との混載である、「鉄綿混載」もできるようになったのです。
 
 このように非常に改善のオポチュニティが広がることがミルクラン方式の特徴だといえると思います。今まで個々のサプライヤーの荷物だったものを自社の荷とすることでボリュームを増やすとともに、物流会社を集約することで1社当たりの荷量が大幅に拡大します。ここに自社貨物も載ってきますので、さらに荷量が増大します。
 
 これだけでも輸送単価が大幅に下がることになります。しかしミルクラン方式ではこの単価削減だけにはとどまりません。いろいろな工夫でトラック積載率も向上させていくことができるのです。その最たるものが「荷姿改善」です。荷姿を改善することが最も輸送効率化につながるのです。
 

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2. 容器モジュールの統合

 引き取り側は複数のサプライヤーの荷や自社の荷を混載して初めて効率化が図られることになります。しかしここで注意しなければならないことがあります。それは「荷姿」です。いろいろな荷姿があると、混載時にその荷同士が積み重ならないことに気づきます。これでは混載の効果を存分に発揮することができません。どうせ自社ですべて引き取るわけですから、荷姿モジュールを統合することは自社にとってもメリットがあることです。そこで実施すべきは「容器モジュールの統合」です。容器の底面サイズを何種類か設定し、他の容器と積み重ねができるようにするのです。また、容器は圧縮可能タイプへと変更します。容器が空になった時に中身が入った時と同じ容積であることほどムダなことはありません。
 
 空になったら折り畳みができる、ネスティング(紙カップ同士が入れ子になるイメージ)ができるという状態にすることが必要です。こうすることで、空容器置場も縮小できますし、トラックの中もスペースを削減することが可能となります。この容器モジュールの統合のためにはコストがかかります。今まで使用していた容器を捨てて新たなタイプに切り替えるわけですから、容器購入コストが必要になるのです。ここでちょっと二の足を踏みそうになります。でもここは冷静にコスト計算を実施してみましょう。輸送には大きなコストがかかっているはずですから、輸送コスト削減で容器代は十分にカバーできる可能性が大きいのです。短期間で回収できれば、あとは儲かる期間が続くだけです。
 
 ここが他社との相乗りの共同輸送とは異なるところです。共同輸送では容器モジュールを統合するという行動まで行きつくことは稀です。しかしミルクラン方式による引き取り化では一荷主による管理になるので、後は判断あるのみです。ミルクラン方式による引き取り物流にはメリットが山のようにあります。一方で越えなければならない課題も多々あり、歯ごたえのある改善だと思います。徹底的に物流コストを改善したいのであれば、ぜひ取り組みをお勧めします。
 

この記事の著者

仙石 恵一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参きました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

「えっ!物流改善ってそんなに儲かるの?」と驚かれる方がいらっしゃいます。はい、物流を効率化することは会社の利益率に影響するほどの効果があります。 皆さんこんにちは!物流改革請負人の仙石惠一と申します。弊職は日本でも屈指のサプライチェーン…

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