Simple FMEA(FMEA簡易評価法)実施手順(その1)

 FMEAは、一般に、製品の量産を主体とする製造業の実務からかけ離れた理論の解説や、誤った解釈による指導が行われているために、いざ実施する段階で判断に迷ったり、誤った手順で実施されるため、評価結果が正しく出なかったりするケースが非常に多く見受けられます。その理由は、軍需システムや航空機用のFMEAをアメリカから導入後、一般的な工業製品、部品に適合させるための理論立てや、実務手順の具体的な研究が進んでおらず、様々な解釈がなされ、結果として的確な指導がされていないためであると考えられます。
 

1.Simple FMEAとは

 企業の実務者の、このような多くの悩みを解決する目的で、当研究所は「Simple FMEA」の理論と実施手順を研究し、体系化を行いました。「Simple FMEA」は、FMEAを簡易的な手順で実施する新しい技法を指し、FMEAの本来の目的を満たすとともに、確実に評価結果が得られるという特徴を持っています。
 
・「Simple FMEA」は、本来の目的である、信頼性設計が十分かどうかを評価します。
・「Simple FMEA」は、合否判定が容易な、きわめてシンプルな評価方法を用います。
・「Simple FMEA」は、設計FMEA、工程FMEAのどちらにも適用可能な手段です。
・「Simple FMEA」は、ISO/TS16949に準拠します。
 
 では、実際に、製造工程のSimple FMEA実施例を、順を追って解説します。写真の部品は、ホームセンターなどで購入可能な簡単な部品ですが、工程FMEA実施手順の説明のためのサンプル部品として使用します。この部品は、板金加工、組立、溶接、メッキ工程を経て製作されています。
 
                 
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2.QC工程表の作成

 工程FMEA実施に当たっての前提条件は、工程の機能設計と信頼性設計が終了していることです。その設計結果をアウトプットしたものが「QC工程表」です。FMEAは、信頼性設計が漏れなく実施されたかどうかを評価する手段として用います。従って、FMEAを実施する前に、機能設計に加え信頼性設計が必ず実施され、対策された「QC工程表」が完成していなければなりません。多くの間違いは、信頼性設計が手抜きされているために、FMEAの実施段階で初めてあれもこれも対策するという、本末転倒な事が行われていることです。では、改めて機能設計と信頼性設計の中身を見てみましょう。
 

(1)工程の機能設計とは

 工程の機能設計とは、製品を図面指定通り製作するための5M(人、機械、方法、材料、測定)の条件を正しく設定することです。つまり、どんな(スキルの)作業者が、どの機械設備(種類・型番・設定方法)を使用して、どの方法(作業手順)で作業し、何を測定(規格値、測定機、測定方法)するなど、その製造工程で図面通りの特性の製品をアウトプットするための、すべての規定内容を指します。本サンプル部品の場合、2つの部品A,Bを板金加工、曲げ、穴あけ後、溶接を行って2つの部品を接合し、最後にメッキを行う工程を経て製作されます。そのために工程ごとに5Mの条件を明確に規定します。そのQC工程表の記入例を図1に示します。 

 
      
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  図1.QC工程表の記入例
 

 (2)工程の信頼性設計とは

 5Mの条件を規定した後に考慮しなければならないのが、工程の信頼性です。信頼性設計とは、「こうしなさい」とQC工程表に規定してあるのにかかわらず、その通りに実施しない(できない)ために起きる不具合の問題をあらかじめ考慮した設計のことであり、不具合が起きないように工程に対策を加えるために行います。この工程の設計指示違反は工程の故障モードと言います。工程FMEAにおける故障モードの抽出の視点は、製品そのものの不良ではなく、製品を製造するための5M条件である人、材料、設備、方法、測定に注目しなければなりません。
 
 例えば、人の作業を必要とする工程では、故意や過失などで発生するヒューマンエラー、機械作業の工程では、機械の故障による停止、刃物の摩耗、あるいは設定値のズレなど、QC工程図の指示通りに作業が行われない違反事象を指します。その違反事象(故障モード)が要因となり、特性(品質・納期・コスト・安全・環境)に影響を与えることになります。工程設計書(QC工程表)を作成する時に、故障モードとその発生要因を解析し、予防策が全て完了しなければなりません。その予防策とは、指示違反の発生を防止する対策、発生しても製品への悪影響を緩和する対策、および指示違反の発生したことを検知する対策を講ずることです。
 
 工程の信頼性設計を実施するに当たっては、一般的に、技術者個人の経験やスキルに依存している場合がほとんどであり、設計者によって大きなばらつきが生じる欠点が指摘されています。そこで、過去の不具合事例を基に、故障モード(工程指示違反)の項目を類型化し、それぞれの対策方法を列挙したリストを伝承技術として蓄積、信頼性設計時に容易に検索できる仕組みの構築が求められます。FMEA導入に当たっては、このような「信頼性設計のしくみ」および「故障モードと対策一覧表」の導入も並行して実施しなければ、効果は期待できません。
 
 Simple FMEA(FMEA簡易評価法)実施手順(その2)では、工程のSimple FMEAの実施手順、FMEA解析表作成を解説します。
 

この記事の著者

濱田 金男

製造業の現場ですぐ使える独自の品質改善技法の開発と普及活動を行っています。 「ヒューマンエラー防止対策」「簡易FMEA/FTA」「しくみを対策するなぜなぜ2段階法」

1972年OKI高崎事業所入社、設計、製造、品質部門を経験、多くの品質問題に かかわり、失敗経験も豊富、 2014年独立「中小企業」で実務ですぐ使える技法とツール開に取り組む! ●事後対策主体の品質管理から脱却 発生した問題の原因解析…

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