
「新しい生産管理システムを導入したのに仕事が増えた」「結局Excelを使っている」——
多額の投資をしたにもかかわらず、期待した生産性向上につながらないケースは少なくありません。なぜこのような失敗が起こるのでしょうか?
実は、問題の多くはシステムそのものではなく、導入に対する会社側の「考え方」や「進め方」にあります。
本記事では、数々のプロジェクト経験から見えてきた「システム導入で失敗する会社に見られる6つの共通点」を詳しく解説。さらに、プロジェクトを成功に導くための「業務改革」の視点についてお伝えします。
1.はじめに
「新しい生産管理システムを導入したのに、以前より仕事が増えた。」
「システム上の在庫と実際の在庫が合わない。」
「結局、現場ではExcelを使い続けている。」
生産管理システムの導入プロジェクトでは、このような問題が少なくありません。
多額の費用をかけて新しいシステムを導入したにもかかわらず、期待していた生産性向上や在庫削減につながらない。それどころか、新システムへの入力作業が増え、現場から「前の方が良かった」と言われることさえあります。
なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。
私はこれまで、生産管理を含むさまざまなシステム導入プロジェクトに携わってきました。その経験から感じるのは、失敗するプロジェクトには共通点があるということです。
問題はシステムそのものではなく、多くの場合、システム導入に対する会社側の考え方や進め方にあります。
今回は、生産管理システム導入で失敗する会社に見られる代表的な共通点について解説します。
2.共通点1 システム導入そのものが目的になっている
最も多いのが、システムを導入すること自体が目的になってしまうケースです。
例えば、
- 現在のシステムが古くなった
- 保守期限が近づいている
- 他社も新しいシステムを導入している
- DX(Digital Transformation:デジタルトランスフォーメーション)を進めたい
といった理由でプロジェクトが始まります。
もちろん、これらはシステムを刷新するきっかけにはなります。
しかし、本来考えなければならないのは、
「新しい生産管理システムによって、何を改善したいのか。」
ということです。
例えば、
「在庫を20%削減する。」
「生産計画作成にかかる時間を半分にする。」
「納期回答を3日から当日にする。」
など、実現したい業務上の成果を明確にします。
これがないと、プロジェクトの評価基準が「予定日にシステムが稼働したか」になってしまいます。
システムが予定どおり稼働...

「新しい生産管理システムを導入したのに仕事が増えた」「結局Excelを使っている」——
多額の投資をしたにもかかわらず、期待した生産性向上につながらないケースは少なくありません。なぜこのような失敗が起こるのでしょうか?
実は、問題の多くはシステムそのものではなく、導入に対する会社側の「考え方」や「進め方」にあります。
本記事では、数々のプロジェクト経験から見えてきた「システム導入で失敗する会社に見られる6つの共通点」を詳しく解説。さらに、プロジェクトを成功に導くための「業務改革」の視点についてお伝えします。
1.はじめに
「新しい生産管理システムを導入したのに、以前より仕事が増えた。」
「システム上の在庫と実際の在庫が合わない。」
「結局、現場ではExcelを使い続けている。」
生産管理システムの導入プロジェクトでは、このような問題が少なくありません。
多額の費用をかけて新しいシステムを導入したにもかかわらず、期待していた生産性向上や在庫削減につながらない。それどころか、新システムへの入力作業が増え、現場から「前の方が良かった」と言われることさえあります。
なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。
私はこれまで、生産管理を含むさまざまなシステム導入プロジェクトに携わってきました。その経験から感じるのは、失敗するプロジェクトには共通点があるということです。
問題はシステムそのものではなく、多くの場合、システム導入に対する会社側の考え方や進め方にあります。
今回は、生産管理システム導入で失敗する会社に見られる代表的な共通点について解説します。
2.共通点1 システム導入そのものが目的になっている
最も多いのが、システムを導入すること自体が目的になってしまうケースです。
例えば、
- 現在のシステムが古くなった
- 保守期限が近づいている
- 他社も新しいシステムを導入している
- DX(Digital Transformation:デジタルトランスフォーメーション)を進めたい
といった理由でプロジェクトが始まります。
もちろん、これらはシステムを刷新するきっかけにはなります。
しかし、本来考えなければならないのは、
「新しい生産管理システムによって、何を改善したいのか。」
ということです。
例えば、
「在庫を20%削減する。」
「生産計画作成にかかる時間を半分にする。」
「納期回答を3日から当日にする。」
など、実現したい業務上の成果を明確にします。
これがないと、プロジェクトの評価基準が「予定日にシステムが稼働したか」になってしまいます。
システムが予定どおり稼働しても、在庫も減らず、生産性も上がらなければ、本来の意味で成功したとはいえません。
3.共通点2 現行業務をそのまま新システムへ移そうとする
第3回でも触れましたが、システム刷新で特に注意したいのが、現行業務をそのまま新しいシステムへ移すことです。
要件定義を始めると、
「現在の画面と同じものが欲しい。」
「この帳票は今まで使っていたので残してほしい。」
「このExcelと同じ機能を追加してほしい。」
といった要求が現場から出てきます。
しかし、その要求を全て受け入れてしまうと、どうなるでしょうか。
新しいシステムの中に、古い業務がそのまま再現されます。
例えば、以前はシステムからデータを出力し、Excelで加工して会議資料を作っていたとします。
新システムでも同じ業務を残せば、システムは新しくなっても仕事のやり方は何も変わりません。
システム刷新時には、
「この帳票は本当に必要なのか」
「この入力作業はなぜ行っているのか」
「この確認作業はなくせないのか」
という視点で、業務そのものを見直す必要があります。
4.共通点3 現場任せ、またはベンダー任せになっている
生産管理システムは、製造部門だけのシステムではありません。
販売計画、受注、購買、在庫、製造、出荷、原価など、多くの業務と関係しています。
ところが、導入プロジェクトを製造部門だけに任せてしまうケースがあります。
すると、製造部門にとって使いやすいシステムにはなっても、営業や購買、物流との情報連携に問題が残ります。
反対に、
「専門家であるベンダーに任せておけばよい。」
という考え方も危険です。
ベンダーはシステムについては詳しくても、自社の仕事を最も理解しているわけではありません。
自社の業務をどう変えるのかを決めるのは、ユーザ企業自身です。
経営層、現場、システム部門、ベンダーがそれぞれの役割を理解し、一緒に進めることが重要です。
5.共通点4 マスタデータを軽視している

生産管理システムでは、マスタデータが極めて重要です。
品目、部品表、工程、設備、リードタイム、在庫など、さまざまな情報を基に生産計画や所要量を計算します。
どれだけ高性能なシステムを導入しても、元になるデータが間違っていれば、正しい結果は得られません。
例えば、実際には製造に3日必要なのに、マスタ上のリードタイムが1日になっていたとします。
システムは1日で完成する前提で計画を立てます。当然、実際の製造現場との間にずれが生まれます。
すると現場では、
「システムの計画は使えない。」
となり、Excelで独自に計画を作り始めます。
しかし、これはシステムの計算ロジックが悪いのではありません。
入力されている前提条件が間違っているのです。
新しいシステムを導入する際には、システム開発と並行して、マスタを誰が、いつ、どのように維持するのかまで決めておく必要があります。

6.共通点5 例外業務を全てシステム化しようとする
製造現場には、さまざまな例外があります。
特急品、設備故障、材料不足、急な注文変更、手直しなどです。
これら全てに対応できるシステムを作ろうとすると、システムはどんどん複雑になります。
「年に1回しか発生しないケースにも対応してほしい。」
という要求のために、多額の追加開発費が発生することもあります。
ここでは、発生頻度と影響度を考えることが重要です。
毎日発生する重要な業務はシステム化する。
一方、非常にまれな業務は手作業で対応する。
この判断も必要です。
100%の業務をシステム化することが、最適とは限りません。
システム化しないという判断も、立派な要件定義です。
7.共通点6 稼働開始をゴールにしてしまう
システム導入プロジェクトには、必ず稼働日があります。
そのためプロジェクト後半になると、
「何としても○月1日に稼働する。」
ことが最大の目標になりがちです。
しかし、システムは稼働してからが本番です。
新しいシステムを導入すれば、現場の仕事のやり方も変わります。
操作教育だけではなく、
「なぜ、この業務に変えるのか。」
「このデータは何のために入力するのか。」
まで理解してもらう必要があります。
また、稼働後には当初想定していなかった問題も必ず発生します。
そのため、導入前から、
- 誰が問合せを受けるのか
- 問題をどのように管理するのか
- マスタを誰が維持するのか
- 改善要求をどのように判断するのか
といった運用体制を決めておく必要があります。
「システムが動いたからプロジェクト終了」ではありません。
8.成功する会社は「業務」と「システム」を一緒に変える
ここまで失敗する会社の共通点を説明してきました。
反対に、生産管理システム導入が成功する会社には、共通した考え方があります。
それは、
システム導入を業務改革のプロジェクトとして捉えていることです。
最初に、
「会社として何を改善したいのか。」
を決めます。
次に、
「そのために仕事をどう変えるのか。」
を考えます。
そして最後に、
「その仕事を実現するためにシステムに何が必要なのか。」
を決めます。
順番は、
経営目標
↓
業務改革
↓
業務要件
↓
システム要件
↓
システム導入
です。
システムから考えるのではありません。
9.まとめ
生産管理システムは、導入しただけで会社を変えてくれる魔法の道具ではありません。
失敗する会社では、
「新しいシステムを入れれば業務が良くなる。」
と考えてしまいがちです。
しかし、本当に変えなければならないのはシステムではなく、仕事のやり方です。
何を改善したいのか。
どの業務を変えるのか。
何をシステム化し、何をシステム化しないのか。
マスタをどう維持するのか。
そして、稼働後にどう改善を続けるのか。
これらをユーザ企業自身が考え、決めなければなりません。
良いシステムを導入することが目的ではありません。良い仕事の仕組みを作るために、システムを活用することが目的です。
この考え方をプロジェクトの最初から経営層、現場、システム部門、ベンダーで共有できるかどうかが、生産管理システム導入の成否を大きく左右します。