
これまでの記事で、匠ナレッジコア(KATANA×TAKUMI)が「何であるか」「何ができるようになるか」を説明してきました。今回は、その一歩先「では、実際にどうやって作るのか?」にお答えします。題材にするのは、いま当研究所がQA(品質保証)を重視する大手電機メーカー向けに提案している、Gemini方式(Google Cloud)によるナレッジコア構築手順です。「考え方は分かった。で、どのツールで、どう組み立てるの?」という疑問に、具体的な設計図でお答えします。匠ナレッジコアそのものの基礎は 「匠ナレッジコアとは? KATANAとTAKUMIを合わせると何が起きるのか」 をご覧ください。本記事は、その「作り方」の解説です。
1. なぜ「Gemini方式(Google Cloud)」なのか
匠ナレッジコアは、特定のAIに縛られる仕組みではありません。お客様が使っている基盤に合わせて構築します。今回のお客様はGoogle Cloudを全社基盤としているため、Gemini方式を選びました。この方式には、QA重視の大企業にとって次の利点があります。

とりわけ大きいのが、Deep Researchによる外部知見の取り込みと、機密データをテナント内で閉じて扱える点です。品質保証部門は外に出せないデータを大量に抱えています。その扱いに正面から答えられることが、この方式を選ぶ決め手になります。
2. 全体像 ── 2つのグループを、1つのAIに束ねる
構築は、性質の異なる2つの知識を、別々のチーム(グループ)で作り、最後に統合する形で進めます。

3. 出力は、いつも同じ「判断カード」でそろえる
匠グループと刀グループは、扱う知識はちがっても、出力の形は同じにそろえます。これが濱田式の要です。すべての知恵を、次の4点セット【判断...

これまでの記事で、匠ナレッジコア(KATANA×TAKUMI)が「何であるか」「何ができるようになるか」を説明してきました。今回は、その一歩先「では、実際にどうやって作るのか?」にお答えします。題材にするのは、いま当研究所がQA(品質保証)を重視する大手電機メーカー向けに提案している、Gemini方式(Google Cloud)によるナレッジコア構築手順です。「考え方は分かった。で、どのツールで、どう組み立てるの?」という疑問に、具体的な設計図でお答えします。匠ナレッジコアそのものの基礎は 「匠ナレッジコアとは? KATANAとTAKUMIを合わせると何が起きるのか」 をご覧ください。本記事は、その「作り方」の解説です。
1. なぜ「Gemini方式(Google Cloud)」なのか
匠ナレッジコアは、特定のAIに縛られる仕組みではありません。お客様が使っている基盤に合わせて構築します。今回のお客様はGoogle Cloudを全社基盤としているため、Gemini方式を選びました。この方式には、QA重視の大企業にとって次の利点があります。

とりわけ大きいのが、Deep Researchによる外部知見の取り込みと、機密データをテナント内で閉じて扱える点です。品質保証部門は外に出せないデータを大量に抱えています。その扱いに正面から答えられることが、この方式を選ぶ決め手になります。
2. 全体像 ── 2つのグループを、1つのAIに束ねる
構築は、性質の異なる2つの知識を、別々のチーム(グループ)で作り、最後に統合する形で進めます。

3. 出力は、いつも同じ「判断カード」でそろえる
匠グループと刀グループは、扱う知識はちがっても、出力の形は同じにそろえます。これが濱田式の要です。すべての知恵を、次の4点セット【判断カード】で残します。
条件 → 判断 → 理由 → 例外
どんな条件で/何を判断し/なぜそうするのか/どんな例外があるか。形がそろっているから、ベテランの暗黙知も過去トラの分析結果も、同じDBに混ぜても矛盾なく引ける。新人でも読めて、AIも答えやすい。この「様式の統一」があるからこそ、2つのグループを1つのAIに束ねられるのです。
4. 構築手順 、6つのステップ
STEP1 現状診断(砂鉄と玉鋼の在りかを探す)
「使われず眠っている過去データ(砂鉄)はどこにあるか」「継ぐべき暗黙知(玉鋼)は誰の頭にあるか」を洗い出します。ここで最初の対象範囲(テーマ)を1つに絞ります。
STEP2 グループ分け(匠と刀に振り分ける)
洗い出した対象を、暗黙知は匠グループ(TAKUMI)へ、記録済みの過去データは刀グループ(KATANA)へ振り分けます。
STEP3 匠グループを作る(暗黙知を判断カードに)
Geminiを逆質問インタビュアーに仕立て、ベテランに「なぜその判断をしたのか」「もし違う選択なら?」と問い続けます。出てきた言葉を「条件→判断→理由→例外」に整理し、本人に確認してもらってから判断カード化。これをDBに入れます。
STEP4 刀グループを作る(過去データを純化する)
過去のクレーム・不具合データから、KATANAで「作業者の不注意」「教育不足」といった精神論を叩き出し、物理的な真因まで掘り下げます。さらにDeep Researchで外部の最新対策を融合し、これも判断カードにしてDBへ。「処置済み」の1行が、なぜ起きたか・どう防ぐかの資産に変わります。
STEP5 統合(1つの不具合調査アシストAIに束ねる)
匠グループと刀グループの判断カードを同じナレッジDB(NotebookLM/RAG)に集約します。これで「暗黙知」と「過去データ」の両方から、根拠付きで答えるAIが立ち上がります。
STEP6 研ぎ続ける(更新のルールを決める)
DBは作って終わりではありません。再発・外部知見の更新・前提の消滅などで知恵は古くなります。「いつ・誰が・どう見直すか」の運用ルールを決めて初めて、使うほど賢くなる状態が続きます。
5. 導入は「2つのパターン」から選ぶ
同じGemini方式でも、扱うデータの機密性によって環境の作り方が変わります。ここが提案時にいちばん丁寧に設計する部分です。

実務上のおすすめは、「暗黙知から軽量PoCで手応えをつかみ、機密性の高い刀グループは早めにインテナントへ」という組み合わせです。小さく始めて効果を確かめつつ、外に出せないデータは最初からお客様の環境で閉じて扱う——この二段構えが、現実的でリスクの低い進め方になります。
6. この方式の「守り」、 データは、外に出ない
QAを重視する企業ほど気になるのが、データの取り扱いです。Gemini方式のインテナント構成では、次を設計上の前提にします。
- ✓ 機密データはお客様のテナント内で完結し、外部に出さない
- ✓ 入力内容をAIの学習に使わせない
- ✓ 会話の履歴を残さない/セッションを分離する設定
- ✓ APIキーなどの鍵はお客様が保有・管理する
まとめ 、「道具」ではなく「作り方」を提供する
Gemini方式の要点は、次の一文に集約されます。
Geminiで暗黙知を引き出し(匠)、過去データを純化し(刀)、同じ判断カードの形でNotebookLMに束ねて、一つの「不具合調査アシストAI」にする。機密データは、お客様の環境から一歩も出さずに。
大切なのは、これが特定のツール頼みの話ではないことです。KATANA・TAKUMI・判断カード・自律進化ループという「作り方」の骨格は変わりません。お客様がGoogle Cloudなら本記事のGemini方式、Microsoft基盤ならCopilot方式、と基盤に合わせて実装だけを載せ替える——それが濱田式AI品質スタンダードの設計思想です。
最後に
- 品質管理を、属人技から組織標準へ。
- 経験依存から知能協働へ。
- 熟練の暗黙知を、全員が使える武器に。
それが、高崎ものづくり技術研究所の使命です。 濱田(高崎ものづくり技術研究所 代表)
◆関連解説記事・・・熟練の暗黙知を全員が使える武器に~濱田式AI品質スタンダード実務編~