ワークフローを改める~業務再設計の6つのステップ~

情報マネジメント

 「産業IoT化」や「働き方改革」の旗頭の下、業務へのIT導入はもはや必須といえるでしょう。新しい技術は活用し、同じ成果を出すための時間を短くしていかなければいけません。人は、砥石で金属を削っていた作業をグラインダーに替えてきたじゃないですか!キリで穴あけしていた作業をボール盤に替えてきたじゃないですか!それと同じく、ITを使ってできる作業は、どんどん替えていかなければなりません。

 でもちょっと待った!

 そんな時、いきなりソフトウェアを買ってきて業務に取り込もうとすると失敗します。なぜなら、今の仕事のやり方(ワークフロー)とソフトウェアが想定しているワークフローが異なることがほとんどだからです。そのせいで、思わぬ高額な買い物をしてしまうケースが後を絶ちません。つまり業務にITを導入しようとする場合には、現在のワークフローを改める必要が出てくるわけです。

 今回は、そんなワークフローを改める6つのステップについて解説します。この記事はITが苦手な方向けの表現を敢えてしています。エンジニアからみれば違った認識のものもあるかもしれませんが、私が製造業に深く携わっていた経験から、このような伝え方をした方が良いと考えてのことです。その点、ご理解いただければ幸いです。

【目次】

1、ワークフローを改める6つのステップ

 Step.1 現行業務のワークフローを描く

  【ポイント①:品質保証体系図は参考程度】

  【ポイント②:難しくしない】

 Step.2 インプット/アウトプットを明確に

 Step.3 関係者のメリット/デメリットを整理する

 Step.4 担当者をヒヤリングして言語化/図解する

 Step.5 現状の問題発見/改善提案/情報の5Sをする

 Step.6 理想のワークフローを描く

2、IT導入一番の近道とは

 

1、ワークフローを改める6つのステップ

 それでは、6つのステップについて一つずつ見ていきましょう。

Step.1 現行業務のワークフローを描く

 とにもかくにも「今」を知らないことには何も始まりません。まずは「今の業務の流れ」がどうなっているのかを可視化して共通認識にする必要があります。ここでポイントが2つあります。

 【ポイント①:品質保証体系図は参考程度】

 現場の管理業務に精通している人であれば、目にしたことがあるかもしれない「品質保証体系図」。知っていれば知っているほど「業務の流れ」と聞いては、この品質保証体系図をイメージしてしまいます。かくいう私も、一応品質のプロフェッショナルとして理解はできます。

 ところがこの品質保証体系図は、あくまで「仕組み」を図にしているだけですので「業務上の実務」に相当するワークフローとは異なるものであると認識してください。言い換えると『粒の細かさが違う』ということになります。あくまでも実務に合わせたフロー図の作成を心掛けてください。

 【ポイント②:難しくしない】

 フロー図の書き方は、正式にはいくつも決まりがあって素人がいきなりきちんと書こうとすると難しいです。ですので、私がいつも最初にお願いするのは【作業(プロセス)】なのか【判断】なのかだけが分かるように書かれていれば良い、とお伝えしています。

 まずは一通り書く!それが大事です!そのあと、必要に応じてみんなで打合せしたり、専門家に見てもらったりしながら修正すればいいんです。あまり難しく考えずに、まずは簡単に書いてみましょう!

 

Step.2 インプット/アウトプットを明確に

 ISO9001でもいわれていますが、プロセスには必ず「インプット」と「アウトプット」があります。その作業(プロセス)に必要な情報(インプット)は何か、その作業(プロセス)から出すべき情報(アウトプット)は何か。きちんと考え定義しましょう。

 実は、問題が多い業務を調査すると、この「必要な情報」「出すべき情報」の定義があいまいであることが往々にしてあります。この場を使ってきちんと定義しましょう。

 ところで、フロー図の書き方として「オペレーション志向」と「データ志向」という言葉があります。簡単にいうと、やってる作業に注目してフロー図を書くか、情報の流れに注目してフロー図を書くか、くらいに捉えていただければ良いと思います。一般的には、ソフトウェア開発などではデータ志向を推奨する傾向にあります。なぜなら、作業のやり方自体は経験とともに変わってくるかもしれませんが、情報の流れに関しては大きく変わることが少ないからです。

 何の情報を取り扱って、どこにその情報を届ける必要があるのか。例えば、出荷検査の工程。

 「製品」という情報を受け取って、その情報を定量化する【検査】という作業を行い「検査票」という定量化した情報と「適合/不適合」の判断をして「製品」にレッテルを貼る。なので、必要なインプットは「モノ」出すべきアウトプットは「レッテルを貼った製品」、「検査票」というプロセスになります。

 慣れないうちは大変かもしれませんが、難しくはないのです。慣れの問題です。頑張ってみてください!

 

Step.3 関係者のメリット/デメリットを整理する

 意外と抜けがちなのがこのステップです。これが抜けてしまうとどんなことになるか。「今までできたことができなくなるの?そっちのことなのにこっちも何かやらないといけないの?こっちは手間が増えるだけなんだけど…」。なんてことが、いざ進めようと思った時にいろんな部署から声が上がってしまうんです。

 そうならないためにも、今、改めようとしているワークフローの範囲はどうなっていて、その関係者は誰なのか、そして、それらの関係者の作業はどうなってしまうのか。どんなことをお願いしないといけないか。事前に把握し、周知しておく必要があるのです。 

 

Step.4 担当者をヒヤリングして言語化/図解する

 次に実際に業務を行っている人に、その業務に関するヒヤリングを行っていきます。あれ?これって最初じゃないの?そんな風に思った方。その感覚は少し改めてください。

 実はこれ以前のステップは基本的には一人、もしくはプロジェクトメンバーの限られた人で行った方が良い作業です。プロジェクトメンバーと業務の担当者は別です。このステップは、実際にそのワークフローに関わる実務担当者に直接話を聞き、次の項目をヒヤリングしていきます。

  • この流れで合っているか
  • 何か現状の業務に対する問題はないか
  • 実は何か改善案を考えていたりするか
  • やっていることに対して、楽になること、できなくなることは想定内か

 このヒヤリングした内容を基に、現状のワークフローを修正していきます。

 

Step.5 現状の問題発見/改善提案/情報の5Sをする

 「今の問題は何か」。この点を冷静に考えていきましょう。業務をIT化するには、プロセスの最適化の考え方は必須です。この段階での失敗が一番多く、それは「今の業務をそのままIT化しようとすること」なんです。

 今の業務をそのままIT化しても、今抱えている問題は解決しません。むしろ、入力の手間も含めて作業はより面倒になることがほとんどです。

 

 お金と時間をかけて導入したシステムなのに、なんて悲しい結末でしょう。そうならないためにも、現状の問題としっかり向き合ってください。そして、どのようなワークフローであれば問題が解決できるのかを考えるためにも「今の問題は要は何なのか」をきちんと発見することが重要です。

 そして「必要な情報」、「不要な情報」、「誰にとって何の情報が必要か」などを考えながら、ここでもやはりデータ志向で情報を整理し、どのように現状の問題を解決していくのかの改善提案をしてください。

 この段階では箇条書きで結構です。

 例えば、

  <問題:事務作業に時間がかかっていて残業が発生している>

  改善すべき仕事内容:作業日報の集計に時間がとられている

  • 改善提案①:集計が要らないようにタブレットでデータを入力してもらう
  • 改善提案②:VBA[1]を作成して集計作業を定型化する [1]VBAとはVisual Basic for Applicationsの略で、ExcelやWordなどに内蔵されているプログラム言語。
  • 改善提案③:作業日報の入力項目を精査して、入力の手間を削減する

  このような簡単なことでも結構です。そのあと、費用や時間、実現の可能性も含めて議論して決めていけば良いのです。

 そしてもう一点。

 製造業の人は『5S』が得意ですよね?目に見えるものの5Sにとどまらず、目に見えない『情報の5S』もしてみてください。仕事をするにあたって必要な情報、あるいは作業環境を取り巻く情報、いろいろな情報が現場には飛び交っています。それらの5Sを実践し、不要な情報は捨て、いつでも引き出せるようにするにはどうしたら良いか考え、取得したデータを使って計算し、不要なデータが増えないように管理する。そんな視点でも考えてみましょう!

 

Step.6 理想のワークフローを描く

 さて、いよいよ仕上げです。情報の流れ、現状の問題、などを踏まえ理想のワークフローを描いていきます。この際も、あくまでデータ志向であることをを心掛けてください。そうすることで、現状のワークフローに書かれている「プロセス(作業)」とは区別して考えることができるようになります。

 この時点でも「オペレーション(作業)」を中心に考えてしまうと、結局作業のやり方が変えられない悲しい結果になってしまいます。仕上げの段階まで来てそれはないですよね。どのプロセスは誰が(どの部署が)担当することになるのか、というところまでイメージできると良いでしょう。

 そしてプロセスのつながりも含めて、部署最適ではなく全体最適を狙う。そのために仕事のやり方を変えてもらうようお願いする。場合によっては人材配置も見直す。理想のフローの完成とともに「お願いリスト」、「理想のフロー実現のためにクリアするべき課題」なども作成しておくのが望ましいでしょう。これがいわゆる【企画書】の元になるのです。

 

2、IT導入一番の近道

 この記事は、私が多く触れている中小の製造業の方向けに書いています。ですので、ITエンジニアの方から見ると稚拙な記事に思えるかもしれませんが、現実問題として、このようなざっくりとしたやさしい伝え方をしていくことが、IT導入の一番の近道であると考えています。

 私が携わっている主に製造業の現場では、必ずしもITが得意な人ばかりではありません。私もそれほど得意な方ではないと認識していて、つい数年前までは「要件定義って何?」、「ワークフローって何?どうやって書くの?」という状態でした。

 ものづくりの技術者として重要と考えてこなかったため、ある意味では仕方ないと思いたいところですが、とうとうそんなことを言っている時代でもなくなったことは事実だと考えています。一方で、ITエンジニアからみると、製造業の現場はIT化がかなり遅れていて、言葉も通じないし、リテラシーも低いから成果も出にくく、ものすごくギャップを感じる部分もあるかと思います。

 そんなエンジニアは、もう少し現場技術のこれまでの蓄積に関する勉強をし、また一方で製造現場の技術者はITの技術に関する最低限の勉強をするなど、お互いの理解と歩み寄りがIT導入、ひいては生産性向上には不可欠なことであると言えます。


 次回は、仕事のやり方を変える!~業務設計の5つのポイント~を解説します。

 

 【出典】GEMBAコンサルティング HPより、筆者のご承諾により編集して掲載


この記事の著者

大原 健佑

中小ものづくり企業の経営者・管理者へ 現場が自ら動く!現場に任せる!現場の生産性向上と人財育成を圧倒的に加速させます!

中小ものづくり企業の経営者・管理者へ 現場が自ら動く!現場に任せる!現場の生産性向上と人財育成を圧倒的に加速させます!

無料会員登録でさらにあなたに特化した情報を手に入れましょう。

①「情報マネジメント」の関連記事が掲載されたらメールでお知らせ

②専門家「大原 健佑」先生に記事内容について直接質問が可能

③他にも数々の特典があります。