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ヒューマンエラー」の技法解説記事


ヒューマンエラーの考察(その1)

 
ヒューマンエラー
 ヒューマンエラーによる事故やトラブルは、あらゆる場面で発生しています。ヒヤリ・ハットのような小さなトラブルで済むケースから、生命に関わる事故・事業継続が困難なトラブルへと発展するケースもあります。このような重大な事故を未然に防ぐため、ヒューマンエラー防止の対策が必要です。この連載では、ヒューマンエラーの防止を中心に解説していきます。今回は、ヒューマンエラーの基本を取り上げます。
 

1. ヒューマンエラーとは

 ヒューマンエラーとは人的ミスや人的過誤とも呼ばれ、JIS Z8115 ディペンダビリティ(信頼性)用語では「意図しない結果を生じる人間の行為」と定義されています。ヒューマンエラーとは、人的ミスなどの人間の行為によって事故やトラブルなど意図しない結果が生じることです。
 
 ポイントは、人間の行為によって生じるということです。人間の行為には必ずミスが生じます。ヒューマンエラーの対策では、絶対にミスをしないための方法(対策)を考える前に、必ずミスが起こる前提で、施策を考えることが大切です。
 

2. ヒューマンエラーに隠れている要因

 うっかりミスは、ヒューマンエラーの原因としてよく挙げられます。これを、ミスを起こした当人の不注意や性格の問題として片付けていませんか。うっかりミスは原因を掘り下げてみると、手順や環境にミスを起こしやすい要因が隠れています。うっかりという言葉で済まさずに、その人が働く環境や作業手順など、背後に隠れている要因を見つけて、ミス防止の対策を講じることが重要です。
 

3. ヒューマンエラーの原因追究・分析

 人が起因の事故や不具合の原因を考える際、故意などの「意図した行動」によるものか、思い違いなどの「意図しない行動」によるものかという観点(心理学者のジェームズ・リーズンが考案した不安全行動の分類より)が欠かせません。
 
 「意図して」手抜き作業や規定・マニュアル違反などを自ら行った人は、その行為が何らかの悪影響を及ぼすことが分かっています。一方で「意図しない行動」によるヒューマンエラーを起こした人は、スキル・知識不足や自身の思い違いなどで、結果として間違った行為をしています。そのため、「意図した行動」による事故と「意図しない行動」による事故とでは、根本的に対策が異なります。この点を明確にして、更に真の原因を深掘り、追究し、その原因に基づいて対策を決定・実施することで、ヒューマンエラーの再発を防ぐことができます
 

4. 最後は人間の責任

 機械による自動化・システム化でヒューマンエラー対策ができると考えてはいませんか? 確かに、今まで手作業だった工程を機械で自動化した場合、手作業によるミスは防げるでしょう。しかし、システムや機械の設定、メンテナンスなどを行うのは人間ということを忘れてはいけません。もし、設定を間違えたたり、点検漏れなどがあった場合、それが事故や不具合、不良品の生産などにつながるため、これらを防止する対策も講じなければなりません。結局、最終的には人間の責任です。
 

5. ヒューマンエラーとスイスチーズモデル

 スイスチーズモデルを知っていますか、心理学者のジェームズ・リーズンが考案した、ヒューマンエラーから事故・トラブルなどに至るまでの考え方です。スイスチーズ(ところどころに穴が開いているチーズ)をスライスし、そのチーズを薄く切って重ねていくとしましょう。重ねるチーズの枚数が少なければ、穴が重なった部分から向こう側が見えます。しかし、チーズの枚数を増やせば、向こう側が見える確率は低くなります。
 
 これをヒューマンエラーに置き換えると、チーズ1枚1枚はそれぞれ、人・手順・作業環境・管理など、エラーを防ぐための要素です。そして、チーズに空いている穴はヒューマンエラーが起きる可能性を表し、穴が重なって向こう側が見えてしまうと、ヒューマンエラーによる事故が生じたことになります。
 
 チーズが少なければ、チーズの向きを変えるなどの対策を講じても、穴が重なる可能性は高いままです。しかしチーズを増やせば、向こう側が見える確率は下がります。また、それぞれの要素の穴をより小さくする(ふさぐ)対策も必要です。いくらチーズの枚数を増やしても、それが大きい穴だらけのものでは意味がありません。すなわち、エラーを防ぐ要素を増やしつつ、それぞれの要素の穴をふさいでいくことが、事故を防止するために重要なのです。
 
 次回は、ヒューマンエラーとヒヤリ・ハットについて解説します。
 
【出典】この文書は、Tech Note掲載記事から筆者が改変して連載にしたものです。
  

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(いとう りょうた)  / 専門家B / 伊藤コンサルティング

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