書評検索結果

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「ものづくり道」西堀榮三郎著

投稿日 2017/01/25

本書は、日本品質管理の元祖と言われる著者が、80歳を過ぎてそれまでに思考し、行動したことを集大成した書籍です。

日本初の南極越冬隊長であり、チョモランマ登山総隊長であり、原子力研究所理事であり、東芝の革新的真空管開発者というととんでもないスーパーマンをイメージしますが、実体は人間味あふれる真のリーダーであったことが分かります。

革新的な発想法から部下やチームの動かし方まで、すべての技術者に参考になる考え方であふれています。
特に「技術の目的は人類の福祉」という主張は私の持論とも重なり、技術者が肝に銘ずべきです。

政治家や法律家、経済人は、豊かさの分配で人類に貢献しますが、豊かさの総量を増やすことができるのは技術者なのです。

ものづくりの王道を極めたい技術者におススメの一冊です。

「開発・設計におけるQの確保」 品質管理学会中部支部産学連携研究会編

投稿日 2016/09/22

 本書は、トヨタ自動車技監の渡邉浩之氏が産側、早稲田大学の永田靖教授が学側のリーダーとなって、2006年に立ち上げた産学連携研究会の、2010年におけるアウトプットです。

 新製品開発における技術の高度化/複雑化、開発期間の短縮、長期信頼性、低コスト要求など、矛盾する環境の中で「Q(品質)を確保」するために、業務の仕組みやプロセスと考え方を産学共同で検討した経過と結果が示されています。

 13人の共同執筆ですが、うち12人がトヨタ自動車の現役社員であり、担当ページ数で言えば半分以上ですから、本書の内容はトヨタの開発設計プロセスと強くリンクしていると言えるでしょう。

 ツールで言えばSQC(統計的品質管理)と品質工学、デザインレビューが取り上げられ、その中でも品質工学は90ページに渡り中心的に扱われています。

 最終章の図10.2は「全体マップ」なのですが、ここまでやれば「Qの確保」ができるだろうと思われる精緻さで、さすがトヨタと唸らざるを得ません。
 並みの技術者がこれを見ると、頭がクラクラして絶望感に陥ると思いますので、見なかった事にした方が良いでしょう。

 日本最大企業の開発・設計プロセスをのぞいてみたい人におススメです。

「中国工場の品質改善」根本隆吉著

投稿日 2016/07/20

本書はのべ百社以上の中国工場を指導して成果を上げてきた著者による、中国生産における品質改善、現場改善の指南書です。

構成は、失敗事例→実状分析→対策とオーソドックスですが、そこは経験豊富な著者の強みで、全編が事例集のようでありあらゆる原則を実際の例で示したり、補足しているために説得力があると同時に、現場での対応を、超具体的にイメージすることが可能です。

中国現地工場で、あるいは調達先の中国企業の問題に悩む担当者、経営者に強くおススメの一冊です。

「品質コストの管理会計」梶原武久著

投稿日 2013/05/08

従来型の日本品質管理活動においては、「品質第一」主義が主流でしたが、
近年は過剰品質という評価も聞かれるようになり、一方でクレームやリコ
ールの話題も頻出しています。
本書では、品質コスト(予防、評価、不良)に関する広範なアンケートと
インタビューを通じて、これらのメカニズムを解明しています。
最適バランスポイントから遠く離れていた昔は、コストを評価するよりも
ひたすら不良を減らすことがすべての面で優位だったものの、バランスポ
イントに近づいた近年は品質コストが過少あるいは過大になる危険性が高く、
以前に比べると品質コスト評価の重要性が上がっていると結論付けます。
結論だけを知るならば、第9章を読むだけで十分でしょうが、もし$$$name$$$さん
が品質担当者であれば、過去の研究やデータの隙間に横たわる事実の襞を
感じ取るために、全頁をめくることも楽しいでしょう。