自分自身のマーケティング 技術者のキャリア整理法(その1)

更新日

投稿日

 以前、「リストラに負けない研究・技術者のキャリアデザイン」というタイトルでキャリアデザインの概要を解説しました。その中で、キャリアには、大きく分けて3つの選択肢があると述べました。1つ目は、1つのテーマを長期的に一貫して追求する、基礎研究、教師、職人などの専門職型キャリア。2つ目は、予め自分でキャリアプランを練ってそれを一歩一歩クリアしていくというもの。3つ目は、企業や社会環境に身を任せて、その場その場でよりベストなキャリアを選択するもの。

 その拠り所となる理論として、クルンボルツ博士の「計画された偶発理論(Planned Happenstance Theory)」を紹介してきました。

 今回からは、技術者のキャリアデザイン整理法を、4回に分けてもう少し具体的に解説します。自分は何者なのか、社会にとってどういう存在なのか、自分のスペックを知ることが意味を持ってきます。

 まず基本的なことを再確認しましょう。自分の強みと足りないところを知るために、次のようないくつかの視点で自分自身のマーケティングを実施してみることを薦めます。

<自分自身のマーケティング>

  1. 自身で手を下し、印象に残った仕事の成功要因にヒントが眠っている

  2. その時の成果は何だったのか

  3. 役割遂行プロセスで、成功させるために重要視したことは何か

  4. 成功要因として機能した能力=得意スキルは何か

  5. 複数の仕事を振り返ると、得意スキルが浮き出てくる=その集積が自分の強み

  6. 不足部分(弱み)は今後身につける

 それらを、①興味や関心と②知識やスキルにフォーカスしてみると、図1のようなポジショニングマップにまとめることができます。この中で、「したくなく、できないこと」は、当然対象外項目になります。「したいけど、できないこと」は、学習していけば、「したくて、できること」に転化できるようになります。また、「できるけど、したくない」ことは、価値観が合致してモチベーションを持てる機会を得れば可能となります。

 ここで、ハッと気が付いた方もおられたと思います。そうです、興味や関心さえ強ければ、後は努力次第なのです。キャリアチェンジの失敗例と成功例を紹介しましょう。

 まず、失敗例です。製造技術者が、中高年になってから基礎研究をやってみたいと考えていた人が、年上部下の問題や若い人とのコミュニケーションなどの面で実現し...

 以前、「リストラに負けない研究・技術者のキャリアデザイン」というタイトルでキャリアデザインの概要を解説しました。その中で、キャリアには、大きく分けて3つの選択肢があると述べました。1つ目は、1つのテーマを長期的に一貫して追求する、基礎研究、教師、職人などの専門職型キャリア。2つ目は、予め自分でキャリアプランを練ってそれを一歩一歩クリアしていくというもの。3つ目は、企業や社会環境に身を任せて、その場その場でよりベストなキャリアを選択するもの。

 その拠り所となる理論として、クルンボルツ博士の「計画された偶発理論(Planned Happenstance Theory)」を紹介してきました。

 今回からは、技術者のキャリアデザイン整理法を、4回に分けてもう少し具体的に解説します。自分は何者なのか、社会にとってどういう存在なのか、自分のスペックを知ることが意味を持ってきます。

 まず基本的なことを再確認しましょう。自分の強みと足りないところを知るために、次のようないくつかの視点で自分自身のマーケティングを実施してみることを薦めます。

<自分自身のマーケティング>

  1. 自身で手を下し、印象に残った仕事の成功要因にヒントが眠っている

  2. その時の成果は何だったのか

  3. 役割遂行プロセスで、成功させるために重要視したことは何か

  4. 成功要因として機能した能力=得意スキルは何か

  5. 複数の仕事を振り返ると、得意スキルが浮き出てくる=その集積が自分の強み

  6. 不足部分(弱み)は今後身につける

 それらを、①興味や関心と②知識やスキルにフォーカスしてみると、図1のようなポジショニングマップにまとめることができます。この中で、「したくなく、できないこと」は、当然対象外項目になります。「したいけど、できないこと」は、学習していけば、「したくて、できること」に転化できるようになります。また、「できるけど、したくない」ことは、価値観が合致してモチベーションを持てる機会を得れば可能となります。

 ここで、ハッと気が付いた方もおられたと思います。そうです、興味や関心さえ強ければ、後は努力次第なのです。キャリアチェンジの失敗例と成功例を紹介しましょう。

 まず、失敗例です。製造技術者が、中高年になってから基礎研究をやってみたいと考えていた人が、年上部下の問題や若い人とのコミュニケーションなどの面で実現しない場合がいくつかありました。

 次は、成功例です。研究所の戦略見直しで異動を余儀なくされた研究者の異動先として、類似技術の川下領域に活路を見つけた事例です。製品開発、技術開発、技術者教育、品質保証部門など多数の職種がピックアップできました。ここで、図1のポジショニングマップが威力を発揮しました。これらの職種候補の中で、興味や関心の一番目か二番目に強いものを選択することで、スムーズに異動先が決まったのです。

キャリアデザインの整理法 

図1 キャリアデザインの整理法(その1)

   続きを読むには・・・


この記事の著者

粕谷 茂

「感動製品=TRIZ*潜在ニーズ*想い」実現のため差別化技術、自律人財を創出。 特に神奈川県中小企業には、企業の未病改善(KIP)活用で4回無料コンサルを実施中。

「感動製品=TRIZ*潜在ニーズ*想い」実現のため差別化技術、自律人財を創出。 特に神奈川県中小企業には、企業の未病改善(KIP)活用で4回無料コンサルを...


「人財教育・育成」の他のキーワード解説記事

もっと見る
書く力、説明する力 内容が明確に伝わる技術文書の書き方(その47)

  ◆「書く力」と「説明する力」を同時に鍛える 1.書く能力が高い人は説明する能力も高い 「内容が明確に伝わる技術文書の書き方(その4...

  ◆「書く力」と「説明する力」を同時に鍛える 1.書く能力が高い人は説明する能力も高い 「内容が明確に伝わる技術文書の書き方(その4...


ものづくりで求められる「考え抜く力」とは

1. 社会人基礎力の必要性  2018年版ものづくり白書の中で、「深刻化する人手不足の中での現場力の維持・強化、デジタル人材等の人材育成・確保の...

1. 社会人基礎力の必要性  2018年版ものづくり白書の中で、「深刻化する人手不足の中での現場力の維持・強化、デジタル人材等の人材育成・確保の...


文書の内容の伝わり方 内容が明確に伝わる技術文書の書き方(その28)

◆【特集】 連載記事紹介:連載記事のタイトルをまとめて紹介、各タイトルから詳細解説に直リンク!!   今回は、「ルール6:明確に伝わる文...

◆【特集】 連載記事紹介:連載記事のタイトルをまとめて紹介、各タイトルから詳細解説に直リンク!!   今回は、「ルール6:明確に伝わる文...


「人財教育・育成」の活用事例

もっと見る
「気づき」の仕組み 擦り合わせ型開発 基本の仕組み (その2)

【目指すべき開発体制 連載目次】 目指すべき開発体制とは(その1)擦り合わせ型と組み合わせ型 目指すべき開発体制とは(その2)日本企業文化を引きず...

【目指すべき開発体制 連載目次】 目指すべき開発体制とは(その1)擦り合わせ型と組み合わせ型 目指すべき開発体制とは(その2)日本企業文化を引きず...


‐能力開発のシステム創り 製品・技術開発力強化策の事例(その45)

◆能力開発のシステム化に必要不可欠の条件。   前回の事例その44に続いて解説します。    (1) 情報伝達の仕組み創り   (2) 目標を明確にす...

◆能力開発のシステム化に必要不可欠の条件。   前回の事例その44に続いて解説します。    (1) 情報伝達の仕組み創り   (2) 目標を明確にす...


世界をリードするモノづくり中小企業の人づくり

 以前、東京国際フォーラムで東京理科大主催のパネルディスカッションが開催されました。テーマは「ニッチトップで世界をリードする日本のモノ作り企業」。株式会社...

 以前、東京国際フォーラムで東京理科大主催のパネルディスカッションが開催されました。テーマは「ニッチトップで世界をリードする日本のモノ作り企業」。株式会社...